自動車整備士が教えるテンションロッド交換 日産 C33 ローレルで徹底解説

C33 LAUREL

はじめに

インターネットの普及により有益な情報が一昔前よりは簡単に入手できるようになりました。しかしながら、欲しい情報の核心的な部分は公開されていない事も多く、肝心な部分が分からない事もよくあります。

国産車は日本自動車整備振興会連合会が会員向けに提供しているFAINES(ファイネス)やオーナー自らが正規ディーラーで購入や問い合わせすることで、整備要領書が確認出来ますが、一般ユーザーにとってはなかなか馴染みが無く、読み取り方法も独特で理解しづらいと思います。

そこで今回は、テンションロッド交換について日産 C33 ローレルを用いて徹底的に解説します。テンションロッドのブッシュはゴムでできており、高年式の車両であればほぼ全ての車両においてひび割れ亀裂が入っておりひどい車両であればブッシュ内部からオイルが漏れています。

同じ車種をお乗りのオーナーはもちろん、他車にお乗りのオーナーにとっても有料級の情報になると思います。この記事をご覧になりご自身でテンションロッド交換に挑戦される方が一人でも増えれば幸いです。

また、以前投稿したS15 シルビアではテンションロッドのブッシュ打ち替えについても解説しています。併せてご覧ください。

車両情報

・車名:ニッサン
・車台番号:HC33-******
・型式:E-HC33
・原動機の型式:RB20
・総排気量又は定格出力:1.99L
・初度登録年月:1990年(平成2年)1月

テンションロッドとは

テンションロッドとはフロントサスペンションの構成部品の一部であり、テンションロッドブラケットとトランスバースリンクを繋いでいる部品です。機能的な目的は、ホイールの前後方向の動きをコントロールするために設定されています。

現状把握(テンションロッドブッシュの状態)

助手席側のテンションロッドの状態です。ゴム製のブッシュに亀裂が入っており内部に充填されているオイルが滲んできています。

運転席側のテンションロッドの状態はさらに劣化が進行しておりブッシュ内部のオイルも全て無くなっていました。

購入部品

テンションロッドの交換は、ロッドとブッシュがアッセンブリーされた状態の良品と交換するか、もしくはブッシュ単品を油圧プレス等で打ち替えて交換するかの2通りの修理方法があります。また純正部品を使用するか社外部品を使用するかの選択肢があります。今回はカザマオート製(社外部品)のピロテンションロッドに交換します。以下のリンク先から直接購入できます。

ちなみにこの製品は車両取付方向 前側の部分がオフセットされており、切れ角をアップする為にショートナックルの導入をした際に、テンションロッドにタイヤが干渉してしまう不具合を回避できる仕様になっています。

カザマオート C35 ローレル ピロテンションロッド Ver.2



作業紹介

作業スペースの確保

2柱リフトフロアジャッキ&馬等を使用し、車両をリフトアップします。フロアジャッキ&馬を使用したジャッキアップについてはこちらの記事をご覧ください。安全なジャッキアップ方法について解説しています。

また年式が古い車両をリフトアップする場合は、ジャッキアップポイントではなくサスペンションメンバー等の強固な部位でリフトアップすると車体へのダメージが少なく、より安心です。

フロントはジャッキアップポイントを使用
リアはジャッキアップポイントが朽ちていました
リアはサスペンションメンバーでリフトアップしました

アンダーカバー取り外し

二面幅10mmのソケットレンチ等を使用し、下記写真の赤丸の位置にあるボルトを緩めてアンダーカバーを取り外します。

車両後方のボルト4本をアップにした写真が以下です。

アンダーカバーを取り外すと今回の目的であるテンションロッドがお目見えします。

テンションロッド取り外し

テンションロッドは下記写真の赤丸の位置にあるナットを緩めれば取り外しができます。緩める前にWAKO’Sのラスペネを塗布するとネジ部分に浸透し摩擦抵抗が下がることで比較的楽に緩めれます。

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車両前側のボルト&ナットは二面幅17mmのソケット+スピンナーハンドル(600mm)+17mm&19mmメガネレンチを使い緩めます。足回り部品の締め付けトルクは設定値も高く、また固着により非常に硬く締まっていることが多いので、うでの長さが長い工具を使用する事をオススメします。

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緩める際にソケットがナットの頭から外れないように注意して緩めましょう。

車両後側のナットはトランスバースリンクに当たらないようにするためにエクステンションバーを使用して緩めます。

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テンションロッド寸法調整

今回、準備したカザマオート製(社外部品)のピロテンションロッドは全長が調整できる商品になっていますので純正のテンションロッドの寸法を参考にして全長を調整します。

寸法調整する前に、テンションロッド1本につき2箇所あるロックナットを緩めた状態にしてピロ側と赤いロッド側を一番縮めた状態にします。そして、2箇所のロックナットの間にある高ナットのみを回していくことでピロ側と赤いロッド側の長さが均等に広がっていきます。

純正のテンションロッドと長さを合わせる際は丸棒等をブッシュのカラーに挿入しながら合わせると合わせやすいです。最終的には車両上で穴位置を見ながらロックナットを固定するのである程度長さが合えばOKです。

同様にもう一本のテンションロッドも長さを合わせます。

テンションロッド取付

取り付けは取り外しと逆の手順に行います。車両前側のボルト&ナットの締め付けトルク値は9.0〜11kg-m(88.26〜107.9N・m)でナットは再使用不可です。また、テンションロッドを組み付ける際の本締めはタイヤを接地させ空車状態で行います。

また、車両後側のナットは購入したテンションロッドに付属のボルト・スプリングワッシャー・ナットを使用します。ボルトを締め付ける場合は回り留めに10mmの六角棒レンチが必要です。

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締め付けトルク値の指定は特にありませんが、純正と同じ9.0〜11kg-m(88.26〜107.9N・m)で締め付けました。また、締め付ける際にスタビライザーコネクティングロッドのゴムブッシュが干渉してソケットが入らないため、スタビライザーコネクティングロッドの下側のみ緩めた状態での締め付けが必要です。以下は下側のみ緩めた状態の写真です。

また、テンションロッド1本につき2箇所あるロックナットを締め付ける際にはKTC デジラチェ GEK085-W36を使用しました。リアルタイムに締め付けトルク値が出力されるので確実な締め付けが可能です。安全を担保する為にもオススメの商品です。

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テンションロッド取り付け状態確認

取り付けが完成した状態が以下の写真です。車両前側のピロ部分の取り付け方向は以下の通りです。テンションロッドにタイヤが干渉し難い仕様になっています。

取り付け後は、入念に取り付け状態を点検しましょう。テンションロッド前側です。

テンションロッド後側です。

テンションロッド全体の写真です。

アンダーカバー復元

赤丸の位置にボルトを取り付けてカバーを固定すれば、作業は全て完了です。

最後に

いかがだったでしょうか。テンションロッドの交換は作業自体は単純ですが、足回りの部品は締め付けトルク値も高く、また作業姿勢も悪いため、安全に注意した作業が必須です。このホームページをご覧いただき、ご自身で交換される方が一人でも増えれば幸いです。

今回のテンションロッド交換以外にもたくさんの整備ノウハウを公開しています。是非ご覧くださいませ。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら



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