自動車整備士が教える安全なジャッキアップ方法 徹底解説

整備ノウハウ

はじめに

オーナー自身でジャッキアップ(リフトアップ)が出来るようになるとブレーキパッド交換やフルード交換等のブレーキ周りの整備、タイヤ交換やローテーション、車高調の取付やアーム類の交換等の足回りのカスタマイズなど、整備の幅が格段に広がります。さらにジャッキアップできる高さが高いプロ仕様のガレージジャッキ(フロアジャッキ)とリジッドラック(通称:ウマ)を使えば、クラッチ交換やミッション交換、さらにはエンジン交換等の重整備も可能になります。

しかしながら、ジャッキアップ作業は一歩間違えると死亡事故に繋がる大変危険な作業でもあるため作業自体を敬遠されておられる方も多いと思います。

そこで今回はガレージジャッキやリジッドラックの選び方から安全なジャッキアップ方法(フロントジャッキアップ・リアジャッキアップ・両輪ジャッキアップ)まで徹底解説します。ここまで安全に特化して書かれたジャッキアップ解説記事は他にはないと思います。

ぜひ熟読された上で、オーナーご自身での整備を堪能くださいませ。整備作業の参考になれば幸いです。

ガレージジャッキ(フロアジャッキ)購入のポイント

これからガレージジャッキを新たに購入される方や買い替えを検討されている方に向けて購入のポイントを整理しました。

・耐荷重(単位:ton)はご自身の車両重量に耐えられる製品を選びましょう
・ガレージジャッキの車輪は大きいものを選ぶと取り回しが楽になります
車輪と車輪の間(トレッド)が広い製品の方が安定性が高い
安物の低床ジャッキは先端部は確かに低いがハンドル根本が高く車両の奥まで入りません
 →この課題は”スロープ”や”車載ジャッキ”を併用することで改善できます
・本体サイズは大きくなってしまうが、リフトアップ高さは高ければ高い程良い
・エアージャッキはハンドルを動かしてリフトアップする必要がない
 →狭いスペースでも楽にリフトアップできます
・一流メーカー品と安物の違いは”ゆっくり下がること”と”リフトアップ高さが高いこと”です。
・安物のガレージジャッキでもちょっとした加工で”ゆっくり下げる”ことができます。

ジャッキアップポイントは取り扱い説明書に記載されている

自分の車のジャッキアップポイントを調べるには”取扱説明書”を確認しましょう。今回は写真を用いて、具体的にNISSAN Silvia S15で解説します。

フロントのジャッキアップポイントはサスペンションメンバーの中央部(写真の赤丸の位置)です。

右側が車両前方です

リアのジャッキアップポイントはファイナルドライブ部(写真の赤丸の位置)です。

右側が車両前方です

メーカー指定のジャッキアップポイントでリフトアップしないと部品の凹みやホースの切れ等に繋がります。フロント側は絶対にオイルパンをジャッキアップポイントにしてはいけません。いとも簡単にオイルパンが凹みます。

車高の低い車両をジャッキアップするにはスロープを使用する

車高の低い車両をジャッキアップするには車載工具であるパンタグラフジャッキ(通称:パンタジャッキ)やシザースジャッキを使用して車両のシル部分(ボディサイドの下)にあるジャッキアップポイントをジャッキアップしておくとガレージジャッキを車両の中央部にあるジャッキアップポイントまで入れることができます

また、”スロープ”を使用することでパンタジャッキやシザースジャッキを使用せずにそのままでガレージジャッキを使うことができ、非常に便利です。

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車両をリジッドラックより下ろす場合は必ずパンタジャッキやシザースジャッキ、スロープをセットすることを忘れないようにしましょう。ガレージジャッキを下ろした際にジャッキの高さが一番高い部分と車両が激突してしまいます。

フロントジャッキアップ

フロント側をジャッキアップする際は後輪後側に輪止めをし、リジッドラックで支持した後には後輪両側に輪止めをします。ジャッキで支えたままでの作業は絶対に禁止です。今までに車両に挟まれて死亡する事故が数多く発生していますが、原因はほぼこれです。

輪止めは床とタイヤの間でしっかりと摩擦抵抗が生じる”ゴム製”の製品がおすすめです。

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リジッドラックの一流メーカーは”リキマエダ”です。溶接品質もよく作りがしっかりしており3箇所の足にもゴムパッドが採用されておりガレージで使用しても床にキズが入り難いです。PL保険加入済みの製品(保証期間1年)の為、安心して使えます。

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床がコンクリート等の平滑で強固な場合

ジャッキアップポイントにガレージジャッキを当てて、そのまま持ち上げていくと、車両のサイドブレーキが効いていてリアタイヤが固定されている場合はフロントをジャッキアップしてもリアタイヤが動く事はありません。一方で、床がコンクリート等の平滑で強固な場合はガレージジャッキが車両の中央に向かって動くためジャッキアップポイントとガレージジャッキの作用点がズレる事はありません。床が平滑で強固な場合はこの方法でも問題なくジャッキアップは可能です。

床がアスファルトや砂利等の場合

ガレージジャッキの車輪がアスファルトの溝や砂利に阻まれてスムースに動くことができません。このような場合は、車両のサイドブレーキを解除し車両がガレージジャッキに向かって動くようにした状態でジャッキアップします。ガレージジャッキも動かず、車両もサイドブレーキが効いて動かない状態のままでジャッキアップしていくとジャッキアップポイントとガレージジャッキの作用点がズレて大変危険です。ガレージジャッキ、車両のどちらかが動く状態でジャッキアップすることがとても重要です。

ガレージジャッキでジャッキアップが出来ましたら、リジッドラックを車両のシル部分にあるジャッキアップポイントにセットします。

リアジャッキアップ

リア側をジャッキアップする際は前輪前側に輪止めをし、リアのジャッキアップポイントであるファイナルドライブ部にガレージジャッキを合わせてジャッキアップします。リジッドラックを車両のシル部分にあるジャッキアップポイントにセットする際には前輪両側に輪止めをして前輪を固定するとリジッドラックを楽にセットできます。

またリジッドラックをシル部分のジャッキアップポイントの横においておくとガレージジャッキでジャッキアップしていく際に目標のジャッキアップ高さがわかるためガレージジャッキを上げたり下げたりする必要がなくなり、作業効率がさらに向上します。

両輪ジャッキアップ

前輪をジャッキアップしていくとリアバンパーと床との距離が狭くなりガレージジャッキが奥まで入らなくなります。そこで両輪をジャッキアップする際は”スロープ”を2セット使用すると作業が楽に行えます。

スロープを前輪・後輪の両方に配置し、車両をスロープに乗せ、前輪側からジャッキアップしていきます。車両のサイドブレーキを掛けていると後輪はロックされておりスロープから転がり落ちる心配はありませんので安心して作業ができます。前輪がジャッキアップ出来ましたら後輪も同様にジャッキアップしリジッドラックを車両のシル部分にセットします。

両輪ジャッキアップの際はクリーパー(寝板)の同時使用をおすすめします。地震等の緊急時にも車両の下からすぐに脱出が可能です。

おすすめのガレージジャッキ

私がいつも愛用しているガレージジャッキの紹介と新たに買い増すならこのジャッキ!という商品を紹介します。ジャッキにおいては安物を買うメリットは価格以外に何もありませんので安心が担保されている一流メーカーの製品を購入しましょう。

マサダ製作所 2TON ALUMI JACK SJ-20AL

受台最高高さも469mmと十分に高く、アルミ製で重量も20.4kgと鉄製の製品よりも軽く出張修理やサーキットへの持ち込みにも最適です。能力も2.0tonありクラウンなどの重量級の車両でも楽々とジャッキアップが可能でした。詳細はこちらの記事もご覧くださいませ。

マサダ アルミジャッキ 2TON SJ-20AL 2トン SJ20AL masada

マサダ製作所 サービスジャッキ 3TON SJ-30H

自動車整備工場でも数多く採用されているマサダ製作所の手動式ガレージジャッキです。受台最高高さは驚きの606mmです。車両をリフトダウンする際もゆっくりと下ろすことができます。ガレージをお持ちの方には憧れの製品の一つかと思います。

手動式サービスジャッキ 3TON SJ-30H

長崎ジャッキ エアーガレージジャッキ NLA-1.8P

ガレージをお持ちの方が誰しも一度は購入を検討される製品、それがエアーガレージジャッキです。文字通りジャッキのリフトアップをエアーの力で行えます。ハンドルを上下に振ることができない狭いスペースでもリフトアップできますので最適解の一つだと言えます。2柱リフトを導入する前はこの製品を購入しようと決めていました。受台最高高さは620mmです。

マサダ製作所 エアージャッキ ASJ-18M-2S

こちらはマサダ製作所のエアージャッキです。受台最高高さは609mmです。エアージャッキを購入する場合は長崎ジャッキかマサダ製作所がおすすめです。

安いガレージジャッキでもちょっとした加工でゆっくり下げれます

ガレージジャッキを使用する上で特に注意が必要な点が1点あります。それはジャッキアップした状態から車両を下ろしていく際に微調整が難しく想定していた速度よりも一気にジャッキが下がってしまうことです。これは本当に危険です。この現象を回避するために、私は以下のような改善をして使用しています。

ハンドル(丸棒)だけの状態でゆっくり回して緩めること自体が仕組みの悪さだと捉えて、ハンドルに貫通した穴をドリルで開け、そこに鉄棒を差し込みゆっくりと緩めれるようにしています。そうすることで軽い力で微調整が簡単にできるようになり、ゆっくりと車両を下ろしていく事が出来ます。

最後に

いかがだったでしょうか。たかがジャッキアップ。されどジャッキアップ。自動車整備において一番安全に留意が必要な作業がジャッキアップであると個人的には感じています。これからも安全意識を高めた上で自動車整備に没頭されてみてはいかがでしょうか。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら



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