自動車整備士が教えるラジエターホース交換 34年物のゴムホースをバルジを傷つけずに取り外すプロの技! ユーノスロードスターNA6CEで徹底解説

NA6CE EUNOS

はじめに

初度登録から約34年が経過したマツダ E-NA6CE ユーノスロードスター。今回はラジエターウォーターホース3本(アッパー&ロア✖️2)の交換を実施しました。エンジンルーム内の予防整備の一環です。

製造から34年が経過したゴム製ホースは硬化が進み、通常の引き抜き作業では取り外しが非常に困難になっています。今回はそんな状況でも安全・確実に交換できる自動車整備士ならではのプロの技を惜しみなく無料で公開します。

旧車のラジエターホース交換は「引き抜く」のではなく「切開して取り外す」が基本です。バルジ(差し込み部の突起)にキズをつけないための方法を徹底解説します。

車両情報

仕様詳細
車種名称ユーノスロードスター
型式E-NA6CE
原動機型式B6
初度登録年月平成4年(1992年)4月
型式指定番号06199
類別区分番号0003
ボディ幌(ホロ)型
排気量1.6L(NA)
ミッション手動5速
交換時走行距離約140,000km(2026年5月23日)

トレードマークのリトラクタブルヘッドライト(格納式前照灯)も現役でイカしています!

なぜ今、ラジエターホースを交換するのか

本車両は初度登録から34年が経過しています。ラジエターウォーターホースはゴム製品であり、熱・油分・経年による劣化が避けられません。外観上に亀裂や膨潤がなくても、内部劣化によっていつ破裂してもおかしくない状態になっている可能性があります。

ウォーターホースが走行中に破裂した場合、エンジンが数分でオーバーヒートし重大なダメージに至ります。冷却系トラブルは予告なく発生するため、「まだ漏れていないから大丈夫」という判断は34年物の車には通用しません。今回はエンジンルーム内の予防整備として、3本のホース、全数を交換しました。

34年経過のゴムホースは「まだ漏れていない」ではなく「いつ漏れてもおかしくない」と考えましょう。

購入部品(マツダ純正)

今回購入した部品は以下の通りです。インターネット経由でマルハモータースにてオーナーが購入し持ち込みしました。

品番部品名数量価格
B61P-15-184ホースウォーター1本
B61P-15-185ホースウォーター1本
B61P-15-186ホースウォーター1本
9WNC-B3-400クランプ(CLAMP,H)6個
小計12,100円
送料990円
合計13,090円

すべてマツダ純正部品です。旧車のゴムホース交換は純正品を使用することで、バルジ径・取り回し・耐熱性において確実な適合が得られます。自動車メーカー、部品取引先は純正部品で設計・開発・性能試験を実施していますので純正品に勝る部品は基本的にはありません。

今回交換していないが本来は交換すべき部品

NA6CE ユーノスロードスターのドレーンコックは樹脂製であり、尚且つゴム製のガスケットも設定されています。今回はオーナーの部品準備が間に合わず新品部品へ交換せず再利用しましたが、本来は毎回新品部品へ交換することが望ましいです。

品番部品名備考
NF01-15-203コック ドレーン今回は未交換。ガスケットでけでなく、冷却水ドレーンコック自体も樹脂製のため経年劣化します。次回整備時には要交換です。



工具紹介

今回の作業で使用した工具はこれらの工具です。詳細については作業紹介の中で順に紹介します。



作業紹介

ここでは、ユーノスロードスターNA6CEのラジエターホース3本(アッパーホース・ロアホース✖️2)の交換手順を徹底解説します。34年物のゴムホースは完全に硬化しておりバルジ(ニップル)部分に貼り付いていますので、バルジ部分を傷つけずに旧ホースを取り外す方法がポイントになります。

作業に入る前の注意点・冷却水量の把握

冷却水(クーラント)が高温・高圧になっているときにラジエターキャップを開けると冷却水が吹き出して非常に危険なため、エンジンが完全に冷えた状態で作業を開始します。また、作業を開始する前に現状の冷却水の水量を確認しておきましょう。排出した量と同量の冷却水を注入できると必ず同じラインに戻せますので冷却水交換の際は排出量の管理が特に重要です。

作業スペースの確保

フロアジャッキを使用し、車両をジャッキアップします。ジャッキアップについてはこちらの記事をご覧ください。安全なジャッキアップ方法について徹底解説しています。

冷却水の排出

冷却水はアンダーカバーのサービスホールからドレンプラグにアクセスすることで簡単に排出できますが、何も考えずにそのまま排出するとアンダーカバー内部が冷却水まみれになります。

冷却水を排出するにはこのドレンプラグを緩めて排出します。

先端サイズが2番のプラスドライバーを使用して緩めて取り外します。なおこのタイプのドレンプラグは樹脂製でかつ、固着している場合が多いので押す力9、回す力1位のイメージで慎重に緩めましょう。少し緩めてドレンプラグが動くことを確認しましたら以下の養生作業に入ります。

ドレンプラグの取り付け部の外径よりも少し大きなサイズのホースを準備し、ホースを取り付け部に差し込んだ上で以下の写真のようにマスキングテープでホースをアンダーカバーに貼り付けて固定します。

柄の部分が長いドライバーを準備し、ドレンプラグを緩めて取り外します。ちなみにこのドライバーは先端形状がマイナス形状ですが先端を削って丸くしているため、プラス形状のネジも緩めることができます。

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ドレンプラグが取り外せましたらラジエターに設定されているラジエターキャップを緩めて空気がラジエター内に入るようにします。

ラジエターキャップを外すと冷却水が勢いよく排出されますのでトレイから冷却水が溢れないようにラジエターキャップの隙間を調整しながら排出します。冷却水が滴下するまでしばらく放置します。なお、排出した冷却水の量がわかるように目盛り付きの樹脂製トレイを使用して作業しています。

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冷却水が滴下しましたら取り外したドレンコックを再組み付けします。

ドレンコックにはOリングが組み込まれていますので、新品部品へ交換しましょう。

ドレンコックが組み付けられる部分をSHOPタオル等で清掃してから再組み付けします。

ドレンコックを締め付ける際は締めすぎに注意しましょう。

アンダーカバーをパーツクリーナー等を用いて清掃すれば、冷却水の排出作業は完了です。

アンダーカバー取り外し

ラジエターロアホースを交換するにはアンダーカバーの取り外しが必要です。二面幅が10mmのソケットレンチを使用して固定ボルトを緩めます。車両前方の3本とバンパーを固定している左右の2本、車両奥側の2本を緩めます。

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アンダーカバー左右上部の固定ボルト2本も緩めます。車両前側はボルトではなくナットになっていました。ナットを緩める際にネジ部分が錆びていて緩め難い場合は無理やり緩めることはせず、浸透潤滑剤を使用して摩擦抵抗を低減させてから緩めましょう。

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ラジエターロアホース取り外し

ラジエターに接続されているロアホースから交換していきます。

αクランプをプライヤーで摘んで緩めてホース中央部分に寄せます。その際にαクランプ用の専用工具があると緩める際に摘んだ部分が滑ったりすることなく確実に保持できて安全・簡単に作業ができます。

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上側・下側両方ともαクランプを中央部分に寄せておきます。

34年経過したゴムホースはパイプ側に完全に固着していることがあります。無理に引っ張るとホースがちぎれるだけでなく、金属製のパイプ自体の変形・破損やラジエター側の接続部分の折れ等に繋がるリスクがあります。固着して抜けない際は、以下のようなホースピッカーをホースとラジエター側の接続部分の間に差し込み、ホースピッカーが刺さっている真上をカッターで切っていくと接続部分やパイプ側にカッターのキズ跡を入れることなくホースを切ることが出来ます。

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一気に切り込みを入れずにホースピッカーを少し差し込んではカッターで少しカットというように徐々に進めていきます。

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以下の写真の位置までカッターで切り込みを入れると固着したホースをパイプからめくるようにしながら引き剥がすことができます。上側も同様に作業します。

パイプ側にカッターでキズを入れないように慎重に少しづつ切り込みを入れていきます。

パイプの表面もかなり腐食しておりホースが貼り付いていました。

ホースをめくるようにして引き剥がします。

取り外したホースの新旧比較です。左側が旧品、右側が新品です。

旧品を確認しながらαクランプの向きに注意して新しいαクランプを新品ホースにセットします。

ラジエターアッパーホース取り外し

エンジンルームのレイアウトは以下の通りです。原動機はB6 ENGです。

ラジエターアッパーからENG側に接続されているホースを交換していきます。

ロアホース同様にαクランプを専用工具で中央部分に移動させます。

ホースピッカーを使用してラジエターからホースを取り外します。アッパー側はそこまで固着していませんでしたので、そのまま引き抜けました。

ENG側のホースを取り外します。こちら側はガッツリ貼り付いていましたのでロアホース同様にホースピッカーとカッターを使用してホースをカットして取り外します。

ホースを取り外した後の状態が以下の写真です。

ENG 排気側ロアホース取り外し

ENG 排気側ロアホースを交換するにはこの車両の場合は社外製のエアクリーナーが邪魔になりますので取り外してからホースを交換します。ホースバンドと自作の固定ボルトを緩めてエアフロセンサーのコネクターは外さずに接続したままずらしておきました。

目当てのホースはエキゾーストパイプの下に接続されています。

αクランプを専用工具を使用して中央部分にずらします。こういった作業スペースが狭い場所では専用工具の方が先端が滑らずに作業できますので非常におすすめです。

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ENG側のロアホースを取り外します。ENG側からホースピッカーを使用してホースを引き抜くことは作業スペースがなく不可ですのでこういったシーンではホースの中央部分からカッターで切れ目を入れてバルジ側にカッターを走らせてバルジの先端まで切り込みを入れます

バルジ側からホース先端に向かってホースピッカーを切れ目から差し込み、少しづつホースピッカーの真上にカッターで切れ目を入れていきます。先端までホースに切り込みが入れれましたら同様にホースをめくるようにして引き剥がして取り外します。

反対側も同様に作業し、ホースを取り外します。パイプを車両に固定している2本のボルトを二面幅が10mmのギアレンチ等を使用して緩めて取り外します。

パイプ側ホース接続部分の清掃

3本のホース接続部が全て外せましたら接続部分を清掃します。液体ガスケットや錆がこびり付いていますのでワイヤーブラシ等も使用して徹底的に清掃しましょう。DIYで整備することのメリットは自分の車を納得がいくまで徹底的に時間をかけて清掃できることでもありますので気の済むまでやりましょう。

今回は以下のようなカップブラシを電動工具に接続して清掃しました。

電動のカップブラシが当てにくい部位については、耐水ペーパーを小さくカットして以下の写真のように水研ぎすれば簡単に綺麗に清掃できます。

新品ラジエターアッパーホース取り付け

新品ホースをラジエター側、ENG側へ挿入し、αクランプで固定します。ホースはしっかりと端末まで挿入し、ねじれがないように再調整しましょう。αクランプはバルジを確実に越えた位置(バルジより内側)に取り付けないと、走行中の振動や圧力変化でホースが抜けるリスクがあります。αクランプの位置は取り外し前の状態を写真で記録しておき同位置に復元しましょう。αクランプの位置決めが重要です。

新品ENG 排気側ロアホース取り付け

新品ホースを接続する前にパイプ単品状態で車両に復元します。取り付けは2面幅が10mmのボルト2本で締め付けます。

ラジエターアッパーホースと同様に新しいホースを組み付けます。

ちなみにこの車両は社外製のエキゾーストマニホールドが搭載されており自作のこのような遮熱版も搭載されていました。エキゾーストマニホールドと強干渉しておりバンテージがすり減っていましたのでパネルの角度をさらに起こして復元しておきました。

新品ラジエターロアホース取り付け

ロア側も同様にホースを組み付けます。組み付ける前の状態が以下の状態で、徹底的に清掃しております。

以上で3本全てのホースが交換できました。

冷却水の補充・エア抜き

ホース3本の取り付けが完了しましたら、新しい冷却水(LLC)を補充します。ラジエターのドレンコックを確実に締めたかどうか再確認し、ラジエターキャップを外した状態で冷却水をゆっくり注入します。エア抜きが不完全だとオーバーヒートの原因になるため、専用工具を使用してエア抜き作業を行います。

プロの技:冷却水エア抜きを確実に行う方法
冷却水補充後、専用工具をラジエターキャップ部分に取り付けエンジンを始動し、水温が上がるまでアイドリングを続けます。サーモスタットが開いてホース内の冷却水が循環し始めたら、冷却水のレベルがさらに下がるのでその状態まで待機します。エンジンを止めて専用工具を取り外しラジエターキャップを閉めます。エア抜きは1回では不十分な場合があるため、翌日以降も冷却水のレベルを確認することを推奨します。

最終確認

エンジンを止めて冷間状態に戻した後、各ホース接続部やドレンプラグからの冷却水漏れがないか目視確認します。リザーバータンクの冷却水量もMINとMAXの間にあることを確認しましょう。

今回交換したホース3本

ラジエターアッパーホース・ロアホース2本の計3本を純正新品に交換し、34年間で積み上げた劣化リスクを一新しました。ENG側のロアホースはエキゾーストマニホールドからの熱害によりかなり硬化していました。日常的に触手で点検し辛い部位に一番のリスクがありました。

最後に

いかがだったでしょうか。今回のポイントを改めて以下にまとめます。

ラジエターホースは計画的な予防交換が鉄則。34年物のゴムホースは冷却水漏れ・走行中の突然のオーバーヒートリスクが非常に高い

固着したホースは引き抜かずピックツールを差し込みピックツールの真上をカッターで切り込みを入れホースをめくるようにして引き剥がして取り外す。バルジを傷つけると冷却水漏れの恒久的な原因になる

αクランプはバルジの内側に確実に組み付ける

冷却水補充後はエア抜きを念入り。エア残りはオーバーヒートに直結する

・旧車の純正部品は製廃リスクがある。今手に入るうちに交換」が旧車維持の基本姿勢

NA6CEユーノスロードスターオーナーはもちろん、旧車を維持されている方の参考になれば幸いです。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら




 

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