はじめに
初度登録から約24年半、走行距離198,691kmを超えたGF-S15 シルビア。今回はフロントブレーキパッドの交換を実施しました。
交換に至ったきっかけは、毎日の通勤走行中にブレーキの効きがいつもと違うと気付いたことです。毎日同じ車に乗り続けているからこそ、わずかな変化に敏感になれます。旧車オーナーの方にはぜひ愛車を日常的に使い続けることをお勧めします。定期的に乗ることで車の「普通」を体に覚えさせておくと、異変にすぐ気付けます。これは高価な診断機器より確実な早期発見の方法です。
また今回は、ブレーキローターの仮固定方法・ピストン押し戻し時のブレーキフルードの注意点・ブレーキグリースの塗布位置と塗布量といった整備士ならではのノウハウをすべて無料で公開しています。
車両情報

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車種名称 | シルビア spec R(ターボ) |
| 型式 | GF-S15 |
| 原動機型式 | SR20DET |
| 初度登録年月 | 平成13年(2001年)11月 |
| 型式指定番号 | 09269 |
| 類別区分番号 | 0065(SCRYU) |
| ミッション | 手動6速 |
| ボディ | クーペ |
| 交換時走行距離 | 198,691km(2026年5月1日) |
なぜ今、ブレーキパッドを交換するのか
毎日乗っているからこそ気付けた異変
ブレーキペダルを踏んだときの感覚——その微妙な変化に気づいたのは通勤途中でした。制動力が「いつもと違う」という感覚は同じ車両を10年近く乗り続けてきた経験が教えてくれるものです。
毎日乗ることで「車の普通の状態」が体に染み込んでいます。この感覚は診断機器では計測できない、オーナーだけが持てる武器です。旧車をお持ちの方は、できるだけ毎日乗ることを強くお勧めします。
点検で確認できたパッドの状態
感覚の変化を受けてブレーキパッドを点検したところ、摩耗の進行を確認。安全に直結する部品であるため、即交換を判断しました。ブレーキはタイヤと並んで「妥協してはいけない部品」の筆頭です。

購入部品

今回、準備した部品は以下の商品です。WedsSportのREVSPEC PRIMESは、ストリート走行に最適化されたブレーキパッドです。純正に近い踏み味を保ちながら制動性能を確保しており、日常使いの旧車にも適した選択肢です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | WedsSport |
| 商品名 | REVSPEC PRIMES ブレーキパッド |
| 型番 | PR-N132 |
| 適用車種 | ニッサン シルビア / スカイライン / フェアレディZ、ミツビシ GTO 他 |
| 購入金額 | 9,075円 |
| 購入日 | 2023年12月21日(在庫として確保していました) |

工具紹介
今回のブレーキパッド交換で使用した工具は以下の通りです。詳細については作業紹介の中で順に紹介します。

交換前の状態確認(ビフォー)
交換前にブレーキパッドおよびローターの状態を記録しました。車両外側のブレーキパッドが特に摩耗して残量が不足し制動力不足に至っていました。

作業紹介
各部品の取り外し・取り付け手順については動画でも解説しています。
作業スペースの確保
ブレーキパッドを交換するにはフロントホイールを取り外す必要があります。フロアジャッキと馬を使用し、車両をジャッキアップします。ジャッキアップについてはこちらの記事をご覧ください。安全なジャッキアップ方法について徹底解説しています。



フロントホイール取り外し
電動インパクトレンチを使用してホイール固定ナットを緩めてタイヤを取り外します。
電動インパクトレンチを使用すれば、ジャッキアップした後のタイヤが空転する状態でもホイールナットを緩めることが出来ます。


ブレーキパッド取り外し
フロントホイールを取り外した状態は以下の写真です。


ハンドルを右に操作してブレーキパッドを取り外すスペースを確保します。


パッドピンを固定している金属製のクリップを取り外します。取り外しは指で外せます。パッドピンからクリップを抜き取りキャリパーからクリップを取り外す作業順序です。


パッドピンをポンチ等を使用して抜け方向に叩き、抜き取ります。その際に中央に設定されているクロススプリングが跳ねて飛び出さないように手で押さえながら作業しましょう。


クロススプリングを取り外した状態が以下の状態です。


ブレーキパッドを片側ずつ左右均等に引き上げながらキャリパーから取り外します。取り外し難い場合は先端が細いマイナスドライバー等をブレーキパッドの穴部分に差し込み左右均等に引き上げます。


車両外側のブレーキパッドの摩擦材は摩耗限界を超えてすり減っていました。


一方で車両内側のブレーキパッドは偏摩耗していました。


ピストン押し戻し前の徹底清掃
ピストンを専用工具を使用して押し戻す前に、ペーパーウエス等で徹底清掃します。ピストンブーツやピストンにブレーキダスト等が付着したままピストンを押し戻すと摺動抵抗が増加しピストンが固着するリスクが高まるため、徹底清掃してから押し戻します。


ブレーキローターの仮固定方法
ブレーキローターはホイールナットで固定されていますが、ホイールを外した状態ではローターがハブから外れやすくなります。ピストンを押し戻す際にブレーキローターが固定されていないとブレーキローターとキャリパーが干渉してしまいますのでホイールナットと適当なワッシャー3枚を組み合わせてブレーキローターを仮固定します。


ピストン押し戻し時のブレーキフルードの注意点
新しいブレーキパッドをキャリパーへ組み付けるには押し出されたピストンを元の位置に戻す必要があります。ピストンを押し戻すとキャリパー内にブレーキフルードが押し戻され、ブレーキ配管を伝ってブレーキリザーバータンクにブレーキフルードが戻りますのでリザーバータンクの液面が上昇します。リザーバータンク内のブレーキフルードの量を確認し、量が多ければ先に抜き取ってからピストンを押し戻しましょう。
また、ブレーキフルードは塗装面を侵食する性質があるため、ボディに付着した場合はすぐに水で洗い流しましょう。
ピストン押し戻し
専用工具を使用してピストンを押し戻します。


ピストンツールがピストン全体に接触するように当ててピストンを水平に戻すイメージで押し戻します。


ブレーキパッドが摩耗しすぎてピストンがキャリパーから出過ぎているとピストンツールが入らないことがあります。その際はブレーキローターを固定しているホイールナットを緩めてローターを少し傾け、ピストンツールを挿入すればピストンを押し戻すことが可能です。


車両外側も同様にピストンを均等に押し戻します。


全てのピストンが押し戻せた状態が以下の写真です。


新しいブレーキパッドを組み込む前に再度ペーパーウエス等で清掃しましょう。


ブレーキグリースの塗布位置と塗布量
ブレーキグリースの塗布は「多ければ良い」というものではありません。
適切な位置に薄く塗布することが重要です。
- 塗布する箇所:パッドとキャリパーが接触するシム・耳部分、スライドピン、ピストン背面(パッド裏金との接触部)
- 塗布しない箇所:パッドの摩擦材(ライニング面)、ローターのブレーキ当たり面。グリースが付着すると制動力が著しく低下します
- 塗布量:薄く均一に塗る程度で十分。過剰なグリースはブレーキダスト・熱で流れ出し、ライニング面を汚染するリスクがあります
ブレーキグリース塗布
新品のブレーキパッド及びインナーシムにブレーキグリースを塗布します。


使用するグリースはブレーキ関連の整備の際は必ず使用しているWAKO’Sのブレーキプロテクターです。
インナーシムAの両側にブレーキプロテクターを薄く塗ります。グリスを塗布し過ぎるとブレーキダストが余分なグリス塗布部に溜まり不具合につながりますのでピストンが当たる箇所のみに塗布します。


また、整備要領書ではインナーシムBのピストンと直接接触する箇所へのグリス塗布指示はありませんが、私はいつも薄くグリスを塗布しています。


新品ブレーキパッド組み付け
インナーシムへグリスが塗布できましたらブレーキキャリパーへ新しいブレーキパッドを組み付けます。


キャリパー内のブレーキパッドの高さを調整しながらパッドピンを挿入し、クリップを組み付けます。


ブレーキローターをパーツクリーナーで清掃し、ブレーキペダルを軽く踏み込みピストンをブレーキパッドに接触させます。両輪の作業が完了しましたらリザーバータンクの液面を確認し、ブレーキフルードが不足していましたらMAXレベルまで補充しましょう。


フロントホイール組み付け
ブレーキローターを仮固定していたホイールナットとワッシャーを取り外し、車両へホイールを組み付けます。ホイールナットをトルクレンチで規定トルク値(98.1〜117N・m)で締め付ければ交換作業は全て完了です。
交換後の状態(アフター)


WedsSport REVSPEC PRIMES PR-N132への交換により、ブレーキペダルのタッチ感覚が正常に戻りました。新品パッドは初期なじみが出るまで数十km走行が必要ですが、基本的な制動性能は交換直後から向上しています。
最後に
いかがだったでしょうか。今回のポイントをまとめます。
- 毎日乗ることが最良の点検。「いつもと違う」感覚に気づけるのは毎日乗っているオーナーだけの特権。旧車こそ積極的に日常使いするべきです。
- ブレーキは安全に直結する最重要部品。タッチ感覚の変化・異音・制動距離の変化を感じたら即点検・即交換が鉄則
- ローター仮固定・フルード養生・グリース適量塗布の3つのポイントを押さえれば、ブレーキパッド交換はさらに安全に自分でできる整備になる
- パーツ購入は早め。今回のパッドは2023年12月に購入し、2026年5月に交換。ブレーキパーツは重要保安部品であり、さらに旧車用部品は製廃リスクもあるため、必要になる前に確保しておくことを推奨
S15シルビアオーナーはもちろん、4podタイプのブレーキ構造の車両を維持されている方の参考になれば幸いです。
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