自動車整備士が教える冷却水交換 Z34 フェアレディZで徹底解説

Z34 NISMO

はじめに

インターネットの普及により有益な情報が一昔前よりは簡単に入手できるようになりました。しかしながら、欲しい情報の核心的な部分は公開されておらず肝心な部分が分からない事もよくあります。

国産車は日本自動車整備振興会連合会が会員向けに提供しているFAINES(ファイネス)やオーナー自らが正規ディーラーで購入や問い合わせすることで、整備要領書が確認出来ますが、一般ユーザーにとっては馴染みが無く、読み取り方法も独特で理解しづらいと思います。

そこで今回は、冷却水(LLC:ロングライフクーラント)交換について日産 フェアレディZ NISMO Z34を用いて徹底的に解説します。作業におけるカンコツや、ラジエター内部のエア抜きについても実際の作業写真を交えて解説します。

同じ車種をお乗りのオーナーはもちろん、これから冷却水(クーラント)を交換しようと検討されているオーナーにとっても有料級の情報になると思います。この記事をご覧になりご自身で冷却水の交換に挑戦される方が一人でも増えれば幸いです。

欧州車の冷却水(クーラント)交換作業についてはこちらの記事をご覧ください。

車両情報

・車名:ニッサン
・型式:CBA-Z34
・原動機の型式:VQ37
・総排気量又は定格出力:3.69L
・初度登録年月:2017年(平成29年)2月
・NISMO仕様

冷却水(ロングライフクーラント)とは

冷却水とはエンジン各部を適温(80〜90℃)に保つために必要不可欠な液体のことです。アッパーホース、ラジエター、ロアホース、サーモスタット、ウォータージャケットを経由してエンジン各部を循環しており、漏れていない限りはそこまで減りません。ちなみに冷却系統はラジエター・キャップで密閉されており冷却水が熱膨張によって加圧(60〜125kPa)されていますので水温が100℃になっても沸騰せず、気泡の発生が抑えられています。

冷却水交換時期

日産 フェアレディZ NISMO Z34の冷却水はリザーバータンク容量を含めてA/T車の場合、約8.5L充填されています。交換頻度は自家用乗用で初回:7年もしくは走行距離160,000kmのどちらか早い方、2回目以降:4年もしくは走行距離80,000kmのどちらか早い方です。かなりの長寿命です。この車両は初度登録年月が2017年(平成29年)2月でまだ5年程度しか経過しておりませんが、オーナーの希望により7年ではなく5年で今回、交換しました。

購入部品

冷却水は純正部品であるPITWORK スーパーロングライフクーラントを6.0L分(2.0L×3袋)準備します。車両に充填されている容量は約8.5Lですが、車両水平状態で冷却水を下抜きした場合、約6.0Lほど抜けますので3袋あれば十分です。Amazon等のECサイトから購入すれば、小売店の中間マージンが無い分だけ店舗で買うよりもかなり安く購入できます。

作業紹介

冷却水量の把握

冷却水を抜く前に、車両が水平になっていることを確認し、現状の冷却水量を確認します。交換前のリザーバータンク内の冷却水量を把握する事は排出量管理をする上で非常に重要です。水量の把握にはリザーバータンクを横側からライトで照らすと確認しやすいです。

作業スペースの確保

フロアジャッキを使用し、車両をジャッキアップします。ジャッキアップについてはこちらの記事をご覧ください。安全なジャッキアップ方法について解説しています。

冷却水排出前準備

冷却水をドレンプラグから排出する前にエンジンルーム側よりラジエターキャップとリザーバータンクキャップを取り外します。取り外しておく事で冷却水の通路内に空気が入るため、早く冷却水を抜くことができます。

※冷却水は走行直後は非常に高温となるため水温が下がるまでラジエターキャップ開けるのは厳禁です。冷却水が噴き出て火傷しますので要注意です。

冷却水排出

日産 フェアレディZ NISMO Z34の冷却水を排出するには本来であれば樹脂製のアンダーカバーの取り外しが必須です。理由は冷却水を排出するために設定されているドレーンプラグがアンダーカバーの内側に配置されているためです。

そこで、今回はアンダーカバーを外さずに冷却水を排出する方法について紹介します。整備要領書には内径がφ15〜16mm、長さが145mmの汎用ホースを使用すると記載されていますが作業性が良くないため、今回はさらに太いホースを使用します。

内径がφ24mm、長さが154mmのさらに太いホースを使用します。

冷却水排出用のドレンプラグは上の写真の赤丸の位置の中にあります。取り外しには先端サイズが2番の長めのプラスドライバーを使用して緩めます。

冷却水を排出している際にホースが落下すると床が冷却水で大変なことになりますので、マスキングテープを使用してホースをアンダーカバーに固定します。マスキングテープであれば作業後の取り外しも楽々です。

アンダーカバー内部にあるドレンプラグとφ24mmのホースとの位置関係は以下の通りです。ホースが太いとドレンプラグの取り外しも楽に実施できます。

ドレンプラグの取り外しには先端が200mm以上のプラスドライバーを使用します。ドレンプラグを緩めていくとドライバーを伝って冷却水が排出されてきます。

冷却水排出時は冷却水が跳ねますのでギリギリまで車両とトレイ等の受けを近づけると良いでしょう。

冷却水排出量管理

冷却水の交換作業における重要ポイントを紹介します。それは”排出量管理”です。排出できた冷却水量が把握できると、新しい冷却水を入れる際の目安になります。エア噛みしているとなかなか冷却水が入っていきませんので定量的な管理が必須です。今回は6.0L分の冷却水が排出できました。

ドレンプラグガスケット交換

ドレンプラグガスケットは再使用不可部品です。内径がφ7mm、幅が2.0mmのOリングを準備します。

左が旧品、右が新品です。

ガスケットが交換できましたら先端サイズが2番のプラスドライバーでドレンプラグを締め付けます。参考ですが、締め付けトルク値は1.2N・mです。

ラジエターエア抜きプラグ緩め

Z34のエア抜きプラグはラジエター左上側に設定されています。エア抜きプラグとはいわゆる空気抜きのための穴の事です。

エアフィルターケースとラジエター間は非常に狭くアプローチしにくいです。また、エア抜きプラグは樹脂製で非常になめやすく、固着しているケースがほとんどのため、今回はエアフィルターケースを取り外してから、エア抜きプラグを緩めます。

エアフィルターケースは①10mmのボルト1本と②エアフィルターケースとエアダクトを固定しているバンドクランプの8mmのボルト1本を緩め、③エアフローセンサーのコネクターと④ビルトインクリップを取り外すと摘出できます。エアフィルターケースの取り外しは非常に狭いので慎重に取り外します。

取り外した後のエアフィルターケースが以下の写真です。

エアフィルターケースが外せるとエア抜きプラグにアプローチするためのクリアランスが生まれます。エア抜きプラグは以下の白丸の位置にあります。

エア抜きプラグを緩めるには先端が2番のプラスドライバーと10mmのメガネレンチを使用してドライバーのボルスターを使いエア抜きプラグを舐めないようにして慎重に緩めます。

ボルスター?という方はこちらの記事をご覧ください。ドライバーの適用範囲がさらに拡大します。

エア抜きプラグが緩めれましたら冷却水を補充していきます。

冷却水(クーラント)補充

冷却水の補充には専用工具 LISLE(ライル)SPILL-FREE FUNNEL 24680を使用します。ファンネルを取り付けたままの状態でエンジンを掛けて、”エア抜き”ができます。

日産のラジエターキャップは”B”仕様です。

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ヤカンで水を注ぐ程度の注水速度で冷却水を注入します。途中でエア抜きプラグ取り付け箇所から冷却水が噴き出してきたらエア抜きプラグを締めて、エアフィルターケースを復元します。そして、ラジエターキャップ口元いっぱいまで再度冷却水を注入します。参考ですが、エア抜きプラグの締め付けトルク値も1.2N・mです。

リザーバータンクにも”MAX”ラインまで冷却水を補充したらエンジンを始動します。サーモスタッドが開弁するまで暖機します。暖機時間の目安は3,000rpmで約10分間です。暖機が終わればエンジンを停止させ、ファンネルを取り外し、ラジエターキャップを閉めれば作業は完了です。

最後に

いかがだったでしょうか。冷却水交換は抜いて入れるだけと言ったわけでなく、エア抜き等のやや面倒な作業も付随していますが、正しい作業手順で順番通りにやれば問題なく完了できます。ディーラーやショップに依頼せずに自分で作業するとコスパは最高で、満足度の高い作業が出来ます。

また、排出したLLCは必ず回収し、専門業者(自動車ディーラー、カーショップ、ガソリンスタンド等)に処理をお願いしましょう。冷却水は劇物であり排水溝にそのまま流すと生態系を破壊します。ルールを守り、自分の子供世代に影響を出さない自動車整備を心掛けましょう。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら



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