はじめに
インターネットの普及により有益な情報が一昔前よりは簡単に入手できるようになりました。しかしながら、欲しい情報の核心的な部分は公開されておらず、肝心な部分が分からない事もよくあります。
国産車は日本自動車整備振興会連合会が会員向けに提供しているFAINES(ファイネス)やオーナー自らが正規ディーラーで購入や問い合わせすることで、整備要領書が確認出来ますが、一般ユーザーにとっては馴染みが無く、読み取り方法も独特で理解しづらいと思います。
そこで今回は、HRエンジン スパークプラグ交換について日産 マーチ K13改 NISMO Sを用いて徹底的に解説します。作業におけるカンコツや、各部位の締め付けトルク値についても実際の作業写真を交えて解説します。
エンジン型式が同じHR15をお乗りのオーナーはもちろん、HRエンジン同様、インテークマニホールドがイグニッションコイルの上にレイアウトされているMRエンジンにお乗りの方にとっても有料級の情報になると思います。この記事をご覧になりご自身でスパークプラグ交換に挑戦される方が一人でも増えれば幸いです。
車両情報
・車名:ニッサン
・型式:DBA-K13改
・原動機の型式:HR15
・総排気量又は定格出力:1498cc
・初度登録年月:2016年(平成28年)9月
・NISMO仕様
スパークプラグとは混合気に点火する装置のこと
ガソリンエンジンでは、シリンダー内で圧縮した混合気(ガソリン + 空気)に点火して燃焼させる必要があります。燃焼を適切なタイミングでよい火花で点火するのが点火装置(スパークプラグ)です。
スパークプラグは消耗品であり、交換頻度はメーカー毎に異なりますが、一般タイプの製品で15,000~20,000km、長寿命タイプ(白金プラグ・イリジウムプラグ)の製品で100,000kmほどがメーカーの推奨する目安です。
あくまでも”目安”であってそこまでの距離が保証されている訳ではありませんので”いつもと様子が違う”と違和感を感じた場合は早期の交換をおすすめします。
もっとスパークプラグのことを知りたい!という方はこちらの記事もご覧ください。
購入部品
スパークプラグは日産純正部品 22401-ED71Bを4本準備しました。
また、HR15エンジンのスパークプラグを交換するにはインテークマニホールドの取り外しが必須です。エンジンとインテークマニホールドの間にあるゴム製のガスケット(パッキン)は再使用不可部品ですので、併せて準備します。
また、スパークプラグ交換と同時にエンジンオイル・フィルターも交換しました。エンジンオイルはWAKO’S(ワコーズ)4CT-S 5W-40を4.0L、エンジンオイルフィルターはPITWORKのAY100-NS035を準備しました。Amazon等のECサイトから購入すれば、小売店の中間マージンが無い分だけ店舗で買うよりもかなり安く購入できます。
※このK13改 MarchにはDefiの油圧・油温計が付いていますのでオイルフィルターは標準よりも小さいサイズのものを使用しています。
廃油を処理するにはエーモン工業製のポイパックが便利です。
作業紹介
HRエンジン レイアウト確認
購入部品の項目でも、解説した通り、HR15エンジンのスパークプラグを交換するにはインテークマニホールドの取り外しが必須です。それは以下の写真をご覧頂くと一目瞭然です。
運転席前側に黒い樹脂製のエアダクトのような部品が鎮座しております。この部品が”インテークマニホールド”です。この部品が上の写真のようにレイアウトされているため、インテークマニホールドの真下にあるスパークプラグはインテークマニホールドを取り外さないと交換できません。
HRエンジン インテークマニホールド 取り外し
インテークマニホールドを取り外していきます。年式の古い車両の場合、ホース類の固着があり想定よりも時間が掛かることがありますが、焦らず慎重に作業しましょう。
インテークマニホールドに挿入されているホース3本を取り外します。小さめのプライヤーを使用し、ホースバンドをずらして取り外します。
インテークマニホールドからホースが外せましたらマスキングテープをホース端面に貼ります。そうすることでホース内へのゴミの混入を防ぐことができ、また外したホースが目立つことで取付忘れを防ぐことが出来ます。
インテークマニホールド下側の固定ボルト5本を緩めます。緩める順番は一番左、左から5番目(一番右)、左から2番目、左から4番目、左から3番目(中央)の順です。締め付けトルク値は27N・mですがエンジンの熱を常に受けており固着している場合が多く、非常に硬いです。舐めないように慎重に緩めましょう。
作業スペースが狭くアクセスしにくいです。私はSNAP-ON FBF80と組み合わせて緩めました。エンジンルーム内でボルトを取り外す際はボルト落下防止機能のついたKoken ナットグリップソケットがおすすめです。
左から5番目(一番右)のボルトを緩めるには外気導入側のエアダクトの取り外しが必要です。
エアダクトは左側と下側に爪の掛かりがありますので樹脂を割らないように慎重に引き抜きます。
エアダクトを取り外すと左から5番目(一番右)のボルトが見えます。
しかし、ボルトを取り外すにはエンジンルームハーネスとボルトの頭が干渉していますのでエンジンルームハーネス上部にあるクリップを取り外します。
クリップを取り外すことで工具が入るクリアランスが生まれます。
メガネレンチやギアレンチを使用してボルトを緩めます。私はSK11のMFR1012Lを使いました。
インテークマニホールド左上部と右上部にある固定ボルトもそれぞれ1本ずつ緩めます。また、電子制御スロットル周りを取り外すためにタワーバーが邪魔になりますので、タワーバーも取り外します。
電子制御スロットル(通称:電スロ)を取り外すためにエアクリーナーカバーに接続されているエアダクトを電スロから取り外します。取り外しは8mmのソケットレンチ等を使用してクランプ(ダクトバンド)を緩め、エアダクトを手で引き抜きます。エアダクトが外せましたら、電スロの固定ボルト4本を緩めます。
ボルト4本を取り外すと電スロを固定しておくものが無くなってしまいますので自在ワイヤーとS字フックを使用し、電スロが落下しないように固定します。
今回はEVAPパージェントカーソレノイドバルブへ接続されているホースを外そうとしましたが、なかなか外れずソレノイドバルブ自体が故障するリスクがありましたので今回はホースは外さずにEVAPパージェントカーソレノイドバルブの固定ネジ(プラス3番)を緩めて取り外しました。
これでようやくインテークマニホールドが取り外せます。インテークマニホールドのフロント側(エンジン前側)を抜いて車両から取り外します。
インテークマニホールド取付面 オイルストーンで清掃
インテークマニホールド取り外し後の『清掃前』の写真が以下です。過去に整備したMRエンジンの車両等と比較しても今回のマーチは非常に綺麗な状態でした。
インテークマニホールドの裏面の写真が以下です。ガスケット部分が汚れていることが確認できます。
ウエスやショップタオル等を使い、清掃します。それでも汚れが落ちない場合はオイルストーンを使い清掃します。
オイルストーンを使用する場合は一緒にエンジンオイルやCRC556を使い表面を研磨します。専用のオイルも販売されています。研磨後が以下の写真です。オイルストーンを使用すると見違えるように綺麗になります。
イグニッションコイル 取り外し
イグニッションコイルを取り外すために、二面幅が10mmの固定ボルトを4本緩めます。
固定ボルトを取り外した写真が以下です。
イグニッションコイルのコネクターを取り外します。コネクターの爪部分を押さえながら引き抜くと外せます。指が痛くて外せない場合はカップリングツールを使用するといとも簡単に外せます。イグニッションコイルは上に引き上げることで取り外せます。
イグニッションコイルが取り外せましたらスパークプラグの上部にエンジンオイルが入り込んでいないか確認します。エンジンオイルが入り込んでいる場合はヘッドカバーガスケットの交換が必要となります。
4ヶ所とも点検し、異常はありませんでした。
スパークプラグレンチを使ったスパークプラグの取り外し
スパークプラグレンチを使用しスパークプラグを緩めます。リカバリーには時間と費用を要するため、絶対に舐めないように慎重に作業しましょう。
スパークプラグレンチはKokenのZ-EAL 3300CZ−14を使用して取り外し・取付しました。
新車で車両購入以降、約5,000km毎にWAKO’S 4CT-Sを入れ続けた結果のスパークプラグ4本がこちらです。自分でも驚くほど良い状態が維持できていました。
ここまででスパークプラグ交換作業としては折り返しとなります。
トルクレンチを使ったスパークプラグ取付
K13改のスパークプラグ締め付けトルク値は19.6N・mです。またイグニッションコイルの固定ボルトの締め付けトルク値は7.0N・mです。必ずトルクレンチを使って締め付けましょう。
トルクとは?という方はこちらの記事も併せてご覧ください。
WAKO’S スロットルバルブクリーナーを使った電子制御スロットル洗浄
今回はスパークプラグ交換に伴い、インテークマニホールドを取り外しましたが、電子制御スロットルも取り外していますので併せて清掃をしました。
電子制御スロットルの洗浄は必ず専用のクリーナーを使用しましょう。WAKO’Sのスロットルバルブクリーナーは絶縁性に優れており電子部品への影響も少ないため安心して使用できます。
インテークマニホールド ガスケット交換
古いガスケットをインテークマニホールドから取り外し、取付面を清掃した後に新しいガスケットを取り付けます。
インテークマニホールド再組み付け
復元については取り外しと逆の手順で行います。インテークマニホールドの下側の固定ボルトの締める順番は左から3番目(中央)、左から4番目、左から2番目、左から5番目(一番右)、一番左の順です。締め付けトルク値は27N・mです
EVAPパージェントカーソレノイドバルブ Oリング交換
本来はホース側を取り外しますが、経年劣化でホースが固着しておりソレノイドバルブを壊すリスクがありましたので今回はソレノイドバルブ本体を取り外しました。ソレノイドバルブと車両と接続する部分にはOリングがありますので新品に交換してから組み付けました。Oリングのサイズは6.0×2.5です。
故障診断機(MTG2000)を使ったスロットル全閉位置学習
今回は電子制御スロットルを洗浄しましたので故障診断機を使用して全閉位置学習をします。K13改のOBDⅡコネクターはロアドラフィニッシャーを取り外した中にレイアウトされています。
スロットル全閉位置学習はエンジン作業サポート内にあります。
使用工具紹介
参考までに今回使用した工具を紹介します。エンジンルーム内の作業を行う場合は、トルクレンチの使用やボルト、ナット等が落下しないソケット等の使用をおすすめします。
最後に
いかがだったでしょうか。紹介した作業手順通りに作業していけば問題なく完了できると思います。スパークプラグはエンジンを動かす中でも非常に重要な部品です。たかがスパークプラグ交換と安易に考えず、きちんとした工具を使用して自分の車種の設計値を確認の上での作業をおすすめします。
スパークプラグ交換以外にもたくさんの整備記事を記載しています。是非ご覧くださいませ。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら
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