はじめに
古い車を大切に乗っているオーナーが必ず悩まされる問題、それは”ゴム部品の劣化”です。窓に使用されているウェザーストリップやグラスラン、エンジンマウントやブッシュ、ブレーキのピストンブーツなど自動車には様々な部位でゴム製品が使用されています。
今回はタイロッドエンドブーツの破れによるグリス漏れの修理について徹底解説します。グリスが漏れていると車検はもちろん通りませんし、万が一、検査員の見落としで車検を通せたとしても、ブーツの破れた箇所から雨水などの水分が混入し、ボールジョイントが錆びつき固着するなどより深刻な不具合になりかねません。修理代は少なく見積もってもディーラーやショップ、町工場へ出すと1万円は掛かります。一見難しそうな修理に見えますが、意外と簡単に安く自分で出来ますので順に紹介します。車いじり(整備作業)の参考になれば幸いです。
この記事を読むと以下のことが分かります。
・タイロッドエンドブーツ単品の購入方法がわかる
・再使用不可部品や締め付けトルク値がわかる
・作業における重要なポイントやカンコツがわかる
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不具合状況
タイロッドエンドブーツが切れて、ボールジョイントに塗られているグリスがブーツ内部から溢れてきています。ちなみに、タイロッド(tie rod)とは操舵輪を左右に動かすためのロッドで、ステアリングリンケージの左右の端にそれぞれ固定されており、ナックルアームと繋がっています。また、アライメントにおいて、”トー”を調整する場合はロックナットを緩めてからタイロッドの出代を調整します。
購入部品
日産純正部品ではタイロッドエンドブーツ単品ではサービス部品の設定が無く、部品購入ができません。タイロッドエンドASSYになってしまいますので部品代が割高になります。
そんなイマイチな状況を打開してくれるナイスな商品が大野ゴム工業には存在しており、なんとタイロッドエンドブーツのみの購入が可能です。
・メーカー名:大野ゴム工業(OHNO)
・型番:DC−1125
またスローテッドナットに緩み止め目的で取り付けられているコッターピンは再使用不可ですので、コッターピンも併せて購入します。
部品番号:08921−3252A
部品名称:ピン スプリット コッター
作業紹介
車両をジャッキアップし、馬をセットしてホイールを外します。ハンドルをフルテンダーすればタイロッドエンドブーツが見える位置にきます。
コッターピン(ネジに刺さっているピン)をプライヤー等で引き上げ、スローテッドナットから取り外します。コッターピンを取り外すのにオススメの工具についても紹介します。Knipex X-CUTコンパクトニッパーです。コッターピンを挟んで引き上げた後に”てこの原理”で引き出すのに便利です。プロの整備士も使っている人が多いです。
コッターピンが外せましたらネジ部分にラスペネをひと吹きし、しばらくしてからメガネレンチ等でスローテッドナットを緩めます。緩んだらスローテッドナットをボルトの端面と同じ高さにしておきます。
また、この時にタイロッドエンドブーツの傘部分を少し貫通タイプのマイナスドライバーやタガネ等を用いて浮かせておくと後で勘合を外す際に簡単です。タイロッドエンドとナックルアームの圧入を外してしまうと取りにくくなりますので事前にやっておくと時短になります。
タイロッドエンドプーラーの上部をスローテッドナットに、下部をナックルアームとエンドブーツの間にセットしてプーラーのボルトを締め込んでいきます。適宜ボルトを締め込みながらハンマーでプーラーの下部を叩き衝撃を与えていくと簡単に外せます。
外れた後の状態です。今回はブーツ交換が目的なのでブーツが切れないようにプーラーを慎重にセットする必要は全くなく、適当に差し込んでも問題ありません。また、プロの整備士だとプーラーを使わずにハンマーで直接ナックルアームに衝撃を与えてタイロッドエンドを外す方もいます。ナックルアームは頑丈に作られていますので外れれば問題は無いと思います。
タイロッドエンドブーツとタイロッドエンドの間にマイナスドライバー等を差し込み、捻ると簡単に勘合が外せます。外せましたらウエス等で古いグリスを拭き取り、ボールジョイントのガタつきも併せて点検しておきます。
新しいグリスをたっぷりと塗ります。使用するグリスはウレアグリスがおすすめです。
新しいタイロッドエンドブーツを圧入します。圧入治具はソケットの12角32mmを使用し、タイロッドエンドの下側をジャッキで受け、ハンマーで叩き込みます。簡単に圧入することができます。32mmのソケットなんて持ってない!ましてや専用治具なんて存在も知らない!なんて方にはビニールテープの芯の内側を使ったやり方や、ホームセンターで売られている塩ビパイプを使用するやり方でもありだと思います。要は均等に圧入出来れば何でも良いと思います。間違ってもマイナスドライバーを使った叩き込みは厳禁です。プロでもたまにやる人はいますがメリットは何もないです。
ここまでくればもう作業の難所はありません。ナックルアームをセットしてスローテッドを締め付けます。締め付けトルクは30〜39N・mです。規定トルクで締め付けた時にボルトの穴位置とスローテッドナットの穴位置が合わないときはさらに締め込み穴位置を合わします。間違っても緩める側で合わすのは厳禁です。
穴位置を合わせたらコッターピンを差し込みピンの上側を折り返してニッパーでカット、下側はスローテッドナットの端面に合わせてカットします。これにて作業は完了です。
最後に
考え方にもよりますが、私のスタンスとしては部品代+工賃で1万円払うなら、部品代1,000円だけ払って9,000円分の工具を買う方が手元に工具も残りますし、次に繋がり、学びも多いと思います。人それぞれ考え方が違いますので強要は出来ませんが、この作業は工賃節約のためには最適な作業かと思います。是非ともお試しください。節約が出来、達成感を味わえると共に整備の幅がグーンと広がると思います。作業を開始される前の事前準備(工具・情報)が大切です。
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