自動車整備士が教えるR35 GTR フライホイールハウジング異音 交換手順 徹底解説

R35 GTR

はじめに

NISSAN(日産)R35 GTRには生まれ持った数多くの持病(定番の不具合)が潜んでいます。中でも一二を争う持病がこの【フライホイールハウジングの異音】です。なんとこのフライホイールハウジングは初期型から数えて計4回も部品に設計変更が入っています。今回は現時点での最新の対策品に交換します。また、R35 GTRは車両価格だけでなく、部品価格も非常に高額です。今回の修理にあたり部品代だけでも軽く12万円はします。修理代もショップに持ち込むと工賃相場は約8万円〜と高額です。今回の記事を参考にしていただき、”自分で直す”という選択肢の幅が広がれば幸いです。

NISSAN R35 GTRのその他の整備記事はこちら↓



不具合状況

交換作業の紹介に入る前に現状の不具合状況(ガラガラ音)について紹介します。フライホイールハウジング内のベアリングがガタガタになっており、金属音が鳴り響いています。

こちらの動画はもっと衝撃的です。プロペラシャフトがガタガタになっています。このプロペラシャフトの振動が金属音の正体です。



購入品(部品・工具)

フライホイールベアリング(トランスアクスル)

まずは不具合の根本原因であるフライホイールベアリング(トランスアクスル)です。

・部品名称:トランスアクスル(Transaccel)
・部品名称:32040-6AV0A

フライホイールを固定している鉄のプレートは抜け止めで取付時には外します
アルミ製で重量は意外と軽いです
6AV0Aが対策品の最終部番です

なんと以下の商品リンクから購入出来ます!しかもディーラーで購入するよりも遥かに安価です!

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また、参考までに過去4回の設計変更の履歴についても紹介しておきます。今回購入したものは⑤の最新部番のフライホイールベアリングです。

①32040-JF00A→②32040-JF02A→③32040-KB50A→④32040-80B0A→⑤32040-6AV0A

再使用不可部品(日産純正部品)

マフラーのガスケットは再使用すると排気漏れにつながるためもちろん再使用は不可です。また今回は第一触媒を固定しているスタッドボルト、ナットについてもリスクを想定して購入しました。

部品名称:GASKET(第二触媒&サイレンサー 後側)
部品番号:20692-JF00A
数量:1枚

部品名称:GASKET(第二触媒&サイレンサー 前側)
部品番号:20692-24U0A
数量:2枚

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部品名称:COVER RR PLATE
部品番号:30417-JF00A
数量:1枚

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部品名称:NUT
部品番号:20602-41G0A
数量:4個

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部品名称:GASKET TURBO CH
部品番号:14445-JF01A
数量:1枚

部品名称:GASKET TURBO CH
部品番号:14445-JF01B
数量:1枚

部品名称:NUT(第一触媒固定用)
部品番号:14094-4P100
数量:10個

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部品名称:STUD(第一触媒固定用)
部品番号:14416-5X00A
数量:10本

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サポートリフト

今回の作業において必須となる設備を紹介します。第一触媒の取り付けナットを緩めるためにエンジンの後方を下げて作業スペースを確保する必要があります。その際に2柱リフトで作業する場合はサポートリフトが必要です。

・メーカー:JTC
・型番:JTC1180C(TRF40753)
・名称:リフトサポートペダル付
・耐荷重:750kg
・高さ:1360〜2030mm



第一触媒固定のナットとスタッドボルトの調査結果

ナット(14094-4P100)とスタッドボルト(14416-5X00A)の寸法を測定した結果が以下の写真です。第一触媒を取り外す際に、ナットが錆等で固着して外せないことを想定し、ナットだけではなく、念の為にスタッドボルトも合わせて購入しました。ちなみにスタッドボルトを打ち替える際はE型トルクスのE10があれば打ち替えが可能です。

右端の形状がトルクスになっています
E10のソケットを嵌めた状態です



作業紹介

では実際の交換作業を順に紹介します。非常に長くなってしまいますが一気通貫で記事を書いた方が読みやすいと思いましたので今回は一記事にまとめてみます。

1.車両のバッテリーを取り外します。

2.エンジンルーム内にあるO2センサーのコネクター(左右2箇所)をエンジンルーム側から外します。この作業を車両の下(フロア側)からやろうとすると狭すぎて手がなかなか入らず地獄を見ます。

3.中央部分と第二触媒の下側にあるアンダーカバーを取り外します。取り外した後の写真が以下です。

中央のアンダーカバーの取り外しはこちらの記事をご覧ください↓

4.フロントクロスバーASSYを取り外します。なお、取付時の締付トルク値は35.0N・mです。

5.第二触媒&サイレンサー(サブマフラ)を取り外します。なお、取付時の締付トルク値は車両の前側が52.5N・m、車両の後側が34.8N・mです。ガスケット&ナットどちらも再使用は不可です。

マフラーのナットなどの錆びたボルト・ナットを緩める方法はこちらをご覧ください↓

6.ヒートインシュレーターを取り外します。

7.フロントプロペラシャフトASSY(リアの駆動を前輪に戻している細い方)を取り外します。なお、取付時の締付トルク値は前側が45.3N・m×4本、後側が25.2N・m×4本です。中央部の車両との結合部は55N・m×5本です。なお、取り外す前に合いマークをして取り付け時には同じ位置に組み付けます。

8.メインプロペラシャフトASSYを取り外します。なお、取付時の締付トルク値は前側が49.0N・m×4本、後側が25.2N・m×4本です。こちらも合いマークをします。

上記の部品を取り外した後の状態が以下の写真です。次に第一触媒(触媒コンバータ)を外していきますが、エンジンの位置がこのままでは第一触媒を固定している上部のナット(2本)がスペースがなく外せません。よって、エンジンの位置をサポートリフトを使用して下げます。

9.スタビライザーを緩めてずらします。完全に取り外す必要はありません。なお、取付時の締付トルク値は50.5N・mです。

10.フロントサスペンションメンバーの取り付けボルト・ナットを緩めて、サポートリフトでエンジンを支えます。支えた後にエンジンマウントを外し、さらにサスペンションメンバーを下げていきます。なお、フロントサスペンションメンバーの取付時の締付トルク値は前側のナット左右2個、中央部のボルト左右2本、後側のナット左右2個いずれも130N・mです。

エンジンマウントも取り外します

エンジンを下げた状態が以下の写真です。エンジンを下げる前と比較すると第一触媒の上部に作業スペースができています。

サポートリフトでエンジンを支えている状態の写真です。なお、ミッションジャッキは万が一のために下に入れていますので作業では使用していません。

11.第一触媒(触媒コンバータ)を取り外します。ナット5個で取付されています。この作業が今回の交換作業における最大の難所となります。スムーズに外れれば難なく次のステップに進めます。

なお、取付時の締付トルク値は48.5N・mで必ず新品のガスケットに交換して取付けます。

右側のエキゾーストマニホールドターボチャージャーASSY
左側のエキゾーストマニホールドターボチャージャーASSY

また、これまでに取り外した部品は以下の写真の通りです。

12.フライホイールとドライブプレートを固定しているボルト6本を緩めます。クランクプーリーを回し、ボルトがサービスホールから見える位置にくるようにして緩めていきます。

13.フライホイールハウジングを固定しているボルトを緩めて、フライホイールハウジングを取り外します。取り外したボルトはどのボルトがどの位置にあったのかがわかるように不要な段ボールに刺していきます。

14.フライホイールハウジングを取り外した後の写真が以下です。ここまで来るとようやく折り返しです。

15.新品のフライホイールハウジングを取り付けていきます。COVER RR PLATEも新品を取り付けます。

16.第一触媒も取り付けし、エンジンも下の位置に戻していきます。



交換後インプレッション

交換作業完了後の状態(正常状態)を紹介します。フライホイールハウジング内のベアリングガタも改善され金属音も無くなりました。



最後に

非常に長い記事になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。使用する工具、設備も多く、なかなか大変な作業となりますので、工賃の妥当性評価もできるかと思います。内容的にはプロ向けの内容となってしまいましたが工具、設備があれば不可能ではない作業です。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら



R35 GTR
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コメント

  1. ワタナベ より:

    当方もDIYでハウジングの交換を考えていまして、大変参考になりました!
    難所は第一触媒の取り外しだと感じていますが、第一触媒が外品でエンジンを下げなくて外れた場合、ハウジングもエンジンを下げなくても取り出せるのでしょうか? 宜しければ分かる範囲で教えて頂けたらと思います。
    宜しくお願いします。

    • Owner より:

      ワタナベさん

      コメント頂きありがとうございます。お問い合わせの件ですが、エンジンを下げずに作業した場合、
      フライホイールハウジングがサスペンションメンバーから抜けないと思います。下げずに作業したことはないですが、
      クリアランスは非常に狭いです。よろしくお願い致します。

  2. 長谷川勝則 より:

    大変参考になりました。私は2柱リフトを持っていないので、ガレージジャッキで考えているのですが、可能でしょうか?

    • Owner より:

      コメントありがとうございます。第一触媒の取付ボルトへアクセスする際にフロントのサスメンを緩めてエンジンを下げる必要がありますので、リフト量が600mm位あるガレージジャッキを使用してもかなり厳しいと思います。