はじめに
インターネットの普及により有益な情報が一昔前よりは簡単に入手できるようになりました。しかしながら、欲しい情報の核心的な部分は公開されていない事も多く、肝心な部分が分からない事もよくあります。
国産車は日本自動車整備振興会連合会が会員向けに提供しているFAINES(ファイネス)やオーナー自らが正規ディーラーで購入や問い合わせすることで、整備要領書が確認出来ますが、一般ユーザーにとってはなかなか馴染みが無く、読み取り方法も独特で理解しづらいと思います。
そこで今回は、スタビライザー ブッシュ交換&コネクティングロッド交換について日産 R35 GTRを用いて徹底的に解説します。作業におけるカンコツや、各部位の締め付けトルク値についても実際の作業写真を交えて解説します。
同じ車種をお乗りのオーナーはもちろん、これから劣化したブッシュ類を交換しようと検討されているオーナーにとっても有料級の情報になると思います。この記事をご覧になりご自身でブッシュ交換、コネクティングロッド交換に挑戦される方が一人でも増えれば幸いです。
また、今回の作業ではアンダーカバーの取り外しが発生しますので同時にエンジンオイルフィルターも交換されると手間が減り効率が良いと思います。エンジンオイル・フィルター交換作業についてはこちらの記事をご覧ください。
車両情報
・車名:ニッサン
・車台番号:R35-******
・型式:CBA-R35
・原動機の型式:VR38
・総排気量又は定格出力:3.79L
・初度登録年月:2009年(平成21年)12月
購入部品
フロントはスタビライザー ブッシュ交換と同時にコネクティングロッドの交換も行います。リアはスタビライザー ブッシュのみ交換します。今回は全て日産純正部品に交換します。以下のリンク先から直接購入可能です。
・部品番号:54613-JF20A
・部品名称:BUSHING-STABI
・使用数:2個(左右)
・部品番号:54618-EG02C
・部品名称:ROD-STABILIZER(RH)
・使用数:1個
・部品番号:54668-EG02C
・部品名称:ROD A-CONNECTNG(LH)
・使用数:1個
・部品番号:54622-1BA0A
・部品名称:WASHER-SPECIAL
・使用数:2個(左右)
・部品番号:54613-JF20B
・部品名称:BUSH-STABILIZER
・使用数:2個(左右)
アンダーカバー取り外し作業に併せてエンジンオイル・フィルターも交換します。
・メーカー:WAKO’S(ワコーズ)
・商品名:4CR 5W-40
・品番:E445
・容量:4L
・メーカー:WAKO’S(ワコーズ)
・商品名:4CR 5W-40
・品番:E440
・容量:1L
・メーカー:PIAA
・品番:Z5
作業紹介(フロントスタビライザー ブッシュ&コネクティングロッド交換)
作業スペースの確保
2柱リフトやフロアジャッキ&馬等を使用し、車両をリフトアップします。フロアジャッキ&馬を使用したジャッキアップについてはこちらの記事をご覧ください。安全なジャッキアップ方法について解説しています。



また、フロアジャッキ&馬を使用して車両をリフトアップする際にはクリーパー(寝板)も同時に使用するとさらに安全性が向上します。オススメのクリーパー(寝板) についてはこちらの記事をご覧ください。
アンダーカバー取り外し
R35 GTRにおいてスタビライザー ブッシュ&コネクティングロッドの交換にはアンダーカバーの取り外しが必須です。赤丸の位置にある二面幅10mmのボルトと青丸の位置にある2ピースクリップを外します。なお、車両前側(写真では右側)の赤丸4箇所にはキャップグロメットが付いていますので取り外すと中にボルトがあります。
2ピースクリップの取り外しには専用工具があると非常に便利です。片手で簡単に外すことができます。
車両から取り外したアンダーカバーの写真が以下です。上側が車両前側です。ちなみに、エンジンオイルのみ交換する場合は下側のボルトを一箇所だけ外せば交換が可能です。
アンダーカバーを取り外した状態が以下です。今回交換するスタビライザー ブッシュがようやくお目見えします。
スタビライザー ブッシュ状態確認
新品のブッシュに交換する前に現状の状態を確認します。特に外観上の不具合は確認できませんでしたが、この車両は製造から約13年が経過しており、全体的にゴム部品は劣化して硬化が進んでいますので、今回は新品のブッシュに交換します。
運転席のスタビライザー ブッシュの写真が以下です。
助手席のスタビライザー ブッシュの写真が以下です。
コネクティングロッド状態確認
運転席側のコネクティングロッド 下側の写真が以下です。ブーツの破れやグリス漏れ等はありません。
運転席側のコネクティングロッド 上側の写真が以下です。こちらもブーツの破れやグリス漏れ等はありません。
コネクティングロッド取り外し
各部の締結を取り外す前にネジ部に浸透潤滑剤を塗布して摩擦抵抗を下げます。オススメはWAKO’Sのラスペネです。
助手席側のスタビライザーとコネクティングロッドの締結部(下側)のナットを取り外します。ソケットの二面幅は17mm、回り留めに使用するスリムタイプのスパナは19mmを使います。
コネクティングロッドの締結部(上側)とロアアームのナットを取り外します。工具の先端長さを調整しないとステアリングリンケージが干渉して回せない位置にあります。セミディープソケットの二面幅は17mm、回り留めにはスリムタイプの19mmのスパナを使用します。
スタビライザークランプ取り外し
スタビライザークランプの締結部分を緩めます。二面幅14mmのセミディープソケットを使用して緩めます。
全てのナットを緩めてスタビライザーを取り外した状態が以下の写真です。スタビライザークランプは穴の形状が丸穴と長穴で取り付け方向が決まっていますので取り付け時には注意が必要です。
スタビライザークランプ取り付け
スタビライザー クランプ及びスタビライザーを取り外した後の車両の助手席側の状態が以下です。新品部品を取り付ける前に各部の清掃をします。
運転席側の写真は以下です。同様に取り付け前に清掃します。
スタビライザーに新品のブッシュを取り付けます。取り付けが完了したら、スタビライザークランプを締め付けトルク値 50.5N・mでトルクレンチを使用して締め付けます。
コネクティングロッド 新旧比較
コネクティングロッドは新車時から搭載されていた部品と今回購入した部品とでは、ナットの厚みやRHの刻印の廃止、短いネジ部の6角の回り止め加工の廃止などの設計変更が入っておりました。
長いネジ部を新旧比較した写真が以下です。
コネクティングロッド取り付け
新しいコネクティングロッドを取り付ける前にスタビライザーも清掃します。
同様にロアアームも清掃します。R35のロアアームはアルミ製で軽量化されています。
先にネジの長さの短い下側をスタビライザーに仮固定した後に、ネジの長さの長い上側をロアアームの取り付け穴に挿入します。そして、スタビライザーとコネクティングロッドをトルクレンチを使用して締め付けトルク値 99N・mで締め付けます。
締め付け後の写真が以下です。
次にロアアームとコネクティングロッドもトルクレンチを使用して締め付けトルク値100N・mで締め付けます。締め付け後の写真が以下です。
車両前側から見た交換後の写真が以下です。
助手席側についても同様に作業します。スタビライザーとコネクティングロッドを締結します。
コネクティングロッドとロアアームを締結します。
車両前側から見た交換後の写真が以下です。
エンジンオイル・フィルター交換
詳しくは冒頭でも紹介したこちらの記事をご覧ください。
エンジンオイルドレンボルトを外す専用工具を使うとエンジンオイルが高温でも火傷のリスクも無く安全に手を汚さずに交換が出来ます。
ドレンボルトをトルクレンチを使用し、規定トルク値で締め付けます。
作業完了後の写真が以下です。念押しの点検を実施した後にアンダーカバーを復元します。
アンダーカバー取り付け後の写真です。
作業紹介(リア スタビライザー ブッシュ交換)
リア アンダーカバー取り外し
続いてリアのアンダーカバーを取り外します。リアのスタビライザーブッシュ交換にはアンダーカバーの取り外しが必須です。赤丸の2面幅12mmのボルト14本、青丸の2面幅10mmのボルト8本、緑丸の2ピースクリップ4個を取り外すとアンダーカバーが取り外せます。アンダーカバーはカーボン製で非常に高額ですので取り扱い注意です。
取り外した後のアンダーカバーは以下です。
アンダーカバーが外れた状態の車両の写真です。
リア スタビライザーブッシュ位置確認
今回交換するスタビライザーブッシュがお目見えしました。フロントと比較するとリアのスタビライザーバーはかなり細いです。
スタビライザー クランプ・ブッシュ取り外し
スタビライザーブッシュを固定しているクランプを二面幅14mmのセミディープソケットを使用して外します。緩める前にWAKO’Sのラスペネを塗布してから緩めると緩めやすくなります。
リア側のスタビライザークランプにも取り付けの向きがありますので注意が必要です。
車両前側には切り欠きがありません。
リア側のスタビライザーブッシュはスタビライザーを車両から取り外さなくても交換が可能です。
スタビライザークランプをブッシュから外して、ブッシュをスタビライザーから取り外します。取り外せましたら新しいブッシュを取り付ける前に清掃します。
反対側も同様に取り外します。
リア スタビライザー ブッシュ・クランプ取り付け
R35 GTRの新品スタビライザーブッシュは非常に硬く、指で開いてスタビライザーバーに挿入するのは特に大変です。マイナスドライバーとホースリムーバーを使用すればいとも簡単に取り付けできます。
スタビライザーバーに先にホースリムーバーを挟み、ブッシュの切れ目にホースリムーバーの先端を挿入します。
ホースリムーバーのグリップ部分を握れば楽にブッシュを開くことができます。
ブッシュをスタビライザーバーにセットできましたらスタビライザークランプをセットしてナットで締め付けます。
スタビライザークランプの締め付けトルク値は33N・mです。トルクレンチを使用してトルク締めします。
取り付け完了後の写真です。
反対側も同様に作業します。
リア アンダーカバー取り付け
念押し確認が完了しましたらアンダーカバーを復元します。
取り付けは取り外しと逆の手順で行います。落とさないように細心の注意が必要です。
最後に
いかがだったでしょうか。スタビライザー ブッシュや、コネクティングロッドの交換は作業自体は単純ですが、足回りの部品は締め付けトルク値も高く、また作業姿勢も悪いため、安全に注意した作業が必須です。また取り付け順序やブッシュ挿入時のノウハウを知らないで作業すると時間ばかりが経過して一向に作業が終わりません。是非ともこのホームページをご覧いただき、ご自身で交換される方が一人でも増えれば幸いです。
今回の作業以外にもたくさんの整備ノウハウを公開しています。是非ご覧くださいませ。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら
コメント
車種関係なく締め付けトルクは33Nでしょうか
私は42Nで締めましたが、強すぎるとブッシュが必要以上につぶれてよろしくないでしょうか
当然ですが、設計思想が異なりますので車種毎に値は異なります。
強すぎると懸念事項はそのようになるかと思われます。