自動車整備士が教えるエンジンマウント交換 トヨタ AZR60G ノアで徹底解説

AZR60G NOAH

はじめに

古い車を大切に乗っているオーナーが必ず悩まされる問題、それは”ゴム部品の劣化”です。以前の記事でタイロッドエンドブーツの交換方法について書きましたが、今回はエンジンマウントの交換について徹底解説します。エンジンマウントが劣化するとエンジン振動が室内にまで伝わり快適性をとてつもなく害います。部品代や交換工賃を考慮すると決して安い修理ではありませんが、新車時の乗り心地を取り戻すためには必須の作業です。エンジンマウントとは?交換方法は?等、作業の流れを把握するためにも是非最後までお読みいただければ幸いです。

タイロッドエンドブーツの交換記事についてはこちら↓



現状確認

エンジンマウント交換前のエンジン振動の様子です。この振動が室内まで伝わっていました。ギアをドライブに入れたまま停止するとこの振動が発生し、車両が走り出すと振動が止まります。

エンジンマウント フロント 前側

エンジンマウント フロント 後側

エンジンマウント エンジンルーム内 運転席側



購入部品

今回交換するエンジンマウントは車両の下側から交換するものがフロント 前側、後側で2個、エンジンルーム側から交換するものが左右で2個の計4個です。

・フロント 前側
・部品名称:INSULATOR ENGINE
・部品番号:12361-28171

・フロント 後側
・部品名称:INSULATOR ENGINE
・部品番号:12371-28090

・エンジンルーム側 助手席側
・部品名称:INSULATOR ENGINE
・部品番号:12372-28100

・エンジンルーム側 運転席側
・部品名称:INSULATOR
・部品番号:12305-28080



作業紹介(フロント 前側)

2柱リフトを使いエンジンマウントの交換をする場合は【サポートジャッキ】を使用して作業を進めていきます。

フロアの下側からフロント 前側のエンジンマウントを交換していきます。交換にあたり樹脂製のカバーが邪魔になりますのでクリップを取り外し、ずらしておきます。

サポートジャッキを使用してトランスアクスルを支えます。

トランスアクスルとの連結をしている横向きのボルト1本を緩めます。なお取り付け時における締め付けトルクは56N・mです。

エンジンマウントを固定しているボルト2本を下側から緩めます。

ボルトが外せますと、エンジンマウントが取り出せます。フロント 前側のエンジンマウントを新旧比較した写真は以下の通りです。左が旧、右が新です。設計変更が入っており形状が変わっていました。

締め付けはトルクレンチを使用して締め付けます。

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作業紹介(フロント 後側)

フロアの下側からフロント 後側のエンジンマウントを外していきます。エンジンマウンティングブラケットRRとの連結をしている横向きのボルト1本を緩めます。なお取り付け時における締め付けトルクは87N・mです。

また、エンジンマウントを車両に固定しているボルト1本、ナット3個を緩めて外します。なお、取り付け時における締め付けトルクはボルト・ナットいずれも80N・mです。

わかりにくいですが、これがエンジンマウンティングブラケットRRです。

エンジンマウント フロント 後側の取り外しは知恵の輪です。このエンジンマウントも設計変更が入っておりゴムの圧入部分の隙間が無くなっています。



作業紹介(エンジンルーム内 助手席側)

3個目のエンジンマウントはエンジンルーム側から交換します。作業に際して邪魔になるバッテリー等は取り外します。

エンジンマウンティングブラケットLHとの連結をしている横向きのボルト1本を緩めます。なお取り付け時における締め付けトルクは56N・mです。

また、エンジンマウントを車両に固定している下向きのボルト2本と横向きのボルト2本を緩めてエンジンマウントを取り外します。なお、取り付け時における締め付けトルクは52N・mです。

交換後の写真が以下です。ちなみに横向きのボルトを抜く際はサービスホールを使って抜き取ります。

エンジンルーム内 助手席側のエンジンマウントの新旧比較です。左が新、右が旧です。明らかに旧のボルト穴位置が下がってしまっているのがわかります。



作業紹介(エンジンルーム内 運転席側)

今回の作業における一番の難所はこのエンジンマウントを交換することです。ABSアクチュエーターへつながるブレーキ配管やパワステオイルの配管、エアコン配管等が邪魔をして困難を極めます。

全ての配管類を切り離してから作業することがセオリー通りではありますが、その後のブレーキ・パワステのエア抜きやエアコンの真空引き等の作業も面倒ですので今回は全て取り外さずにずらして作業しました。赤丸の位置にあるボルトを緩めて自由度を持たせます。

エンジンマウント自体の固定はエンジン側が下側のナット1個と上側のボルト2本、車両側の固定はボルト3本です。締め付け時のトルク値はいずれも52N・mです。

ABSアクチュエーターの左下にもボルトがあります

回転させるように取り外します。多分この向きでしか抜くことは不可能かと思います。

取り外した後のエンジンマウント新旧比較です。左が新、右が旧です。旧はゆるゆるになっており全く機能していないような状態でした。

エンジンマウントを取り外した後の車両側の状態です。きちんと清掃してゴミや砂の噛み込みがないようにして組み付けます。

組み付け完了状態です。なお、エンジンルーム内のエンジンマウントを交換する際は2柱リフトの場合、サポートジャッキではなくフロアジャッキを使用して交換します。木材等を使用してエンジンに負荷がかからないようにしてエンジンを支えながらエンジンマウントを交換します。

交換後レビュー

エンジンマウント交換後の動画を紹介します。動画では非常にわかりにくいかもしれませんが、課題であった、ギアをドライブに入れたまま停止すると発生する【エンジン振動】は完全に解消されました



最後に

いかがだったでしょうか。エンジンマウントの交換は車種が異なるとレイアウトやボルト・ナットの締め付けトルク値は変わりますが、作業の流れはほぼ同じです。エンジンマウントを交換することで、ご自身の大切にされている車の乗り心地が嘘のように変わります。古い車をお乗りの方にはオススメの修理です。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら



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