はじめに
オートスライドドア(電動スライドドア)付き車を所有している方で、スライドドアを開閉しているワイヤーが切れてスライドドアが開かなく(閉まらなく)なった経験をされた方は少なくないと思います。トヨタではNOAHやVOXYはもちろんのこと、車格の異なるアルファードやベルファイアなども同様の構造を採用しているため、同様の不具合が発生します。またワイヤーが切れているという不具合現象は確認できても一体修理にいくら掛かるのか見通しが立つ方は少ないでしょう。
そこで今回はTA-AZR60G NOAH ノアを使ってオートスライドドア ワイヤー交換について徹底解説します。交換に際して必要となる純正部品の情報や、作業手順、工具類についても併せて紹介します。同じAZR60Gをお乗りの方はもちろんのこと同じ構造を採用しているオートスライドドア付き車に乗っている方にとっても非常に有益な情報になると思います。車いじりの参考にして頂ければ幸いです。
購入部品
今回のオートスライドドア ワイヤー交換で購入する部品は以下の純正部品 1点のみです。
・TOYOTA GENUINE PARTS
・部品名称:CONTROL SLIDE DR AT
・部品番号:69641-28010
・助手席側(左側)スライドドア用
開梱した状態が以下の写真です。左上の黒い部品にモーターを自分で移植する必要があります。
参考までに、運転席側(右側)の部品番号は以下です。
・TOYOTA GENUINE PARTS
・部品名称:CONTROL SLIDE DR AT
・部品番号:69631-28010
・運転席側(右側)スライドドア用
ちなみに、ディーラーで修理を依頼するとたとえモーターが健在でもモーターとセットでASSY交換されてしまいますのでさらに割高になります。(部品代だけで税抜 60,700円+工賃で10万円コース)
交換前の状態(ワイヤーが切れた状態)
今回の不具合の発生原因は室内側からスライドドアステップ部に物を落としてしまったようで、物がステップとスライドドアの間に挟まりワイヤーに負荷がかかって切れてしまったとのことでした。
作業紹介
スライドドア トリム部品の取り外し
ドアロックコントロールベゼルLHを取り外します。赤丸2箇所のビスを2番のプラスドライバーを使い緩めて外します。
ドアロックコントロールベゼルLHの爪部分が折れないように慎重に取り外します。
奥側の爪部分の写真です。写真から爪の位置・向きを想定して折れないように慎重に取り外しましょう。
ベゼルが外せましたらリヤドアトリムボードLHを取り外します。トリムボードは11個のクリップでスライドドアに固定されています。クリップを外してリヤドアトリムボードを上に引き上げると簡単に外せます。リヤパワーウィンドウレギュレータースイッチASSYに接続されているコネクターを外せば車両から切り離せます。
リヤドアトリムボードLHを取り外すとこの状態になります。
助手席側(左側)セカンドシート取り外し
作業スペースを確保するためにセカンドシートを取り外します。シートレッグカバーを取り外すにはクリップリムーバーを使い中央のクリップを取り外します。
2面幅14mmのソケットを使用してシート固定ボルトを緩めます。
後側のシートレッグカバーも取り外してシート固定ボルトを緩めます。
計4本ボルトを緩めるとシートが取り外せます。
前側ワイヤー固定ブラケットの取り外し
取り外しにはL型のピックツールを使用すると非常に簡単に取り外せます。
爪の返し部分の隙間に入れて持ち上げるように動かすと一瞬で外せます。
取り外した後の状態が以下の写真です。
リアコンビランプの取り外し
2面幅10mmのソケットレンチで赤丸のボルト2箇所を緩めます。
リアコンビランプをまっすぐ後ろ向きに引っ張ると簡単に車体から外せます。コネクターを外せば車両から切り離せます。
スライドドアセンターレールカバーLH取り外し
スライドドアセンターレールカバーはクリップの嵌合力が強く今回の作業の中でも取り外しにかなり苦戦しました。後側の2本のボルトを2番のプラスドライバーで緩めます。
スライドドアセンターレールカバーをまっすぐ後ろ向きにスライドさせて引っ張るとクリップの根元が外れてスライドドアセンターレールカバーが取り外せる構造になっていますがびくともしませんでした。
今回はハンディリムーバーとマイナスドライバーを使用してクリップを直接外してスライドドアセンターレールカバーを取り外しました。
スライドレールエンドモールディングLH取り外し
スライドレールエンドモールディングLHをマイナスドライバー等で押しながら取り外します。
ピックツールを使用して、ワイヤーの固定ブラケットを取り外します。
スライドドアモーターASSY取り外し
スライドドアモーターASSYを取り外すためにはまず、スライドドアロックリリースモーターASSY(上)とドアコントロールリレーLH(下)を取り外す必要があります。スライドドアロックリリースモーターASSYは2番のプラスビス3本と左上のコネクターを取り外すと右側にずらすことが出来ます。また、ドアコントロールリレーLHは2番のプラスビス2本を取り外すと右側にずらせます。赤丸のクリップ2個についてはドアの内側から爪の返し部分を押してあげると簡単に外せます。
上下を押しながら右側に動かすと簡単に外せます。
この状態にすることでようやくスライドドアモーターASSYの取り外し作業に入ることが出来ます。
スライドドアモーターASSYのワイヤー側をスライドドアから引き抜くにはスライドドア内部にあるリアウィンドウガイドRR LHを外さないと強干渉して抜くことが出来ません。
リアウィンドウガイドRR LHの固定ボルトを緩めます。2面幅は10mmで上側が以下の写真の位置にあります。
リアウィンドウガイドRR LHの下側の固定ボルトは車両外側より緩めます。場所は以下の写真の位置にあります。
リアウィンドウガイドRR LHの固定ボルトが外せましたら、スライドドアモーターASSYの固定ボルトを緩めます。場所は以下の写真の位置です。
車両の外側よりスライドドアモーターASSYの固定ボルト残り2本を緩めます。場所は以下の写真の位置です。
ここまででようやくスライドドアモーターASSYのワイヤー側が自由に動きますのでスライドドアから引き抜きます。
スライドドアモーターASSYの右上のワイヤーが集約されている部分を取り外します。ボルト3本で固定されています。
スライドドアモーターASSYを取り外していきます。ボルト4本で固定されています。下側のボルト2本は白いカバーが邪魔で緩めれませんので白いカバーを外してからボルトを緩めます。右上のグレーのコネクターも取り外します。
今回主役の部品、【スライドドアモーターASSY】が摘出出来ました。
スライドドアモーターの移植
今回購入したCONTROL SLIDE DR ATにはモーターが付属しておりませんのでスライドドアモーターASSYについていたモーターを移植する必要があります。
ハーネスを固定しているタイラップ2箇所をカットして、2番のプラスビス3本(一番下の1本だけ長さが長いです)、2面幅10mmのネジ3本を緩めます。
モーターを取り外すにはコネクターから端子を2本抜く必要があります。コネクターのリテーナー(白い樹脂の部分)を起こしてから、端子を抜きます。
コネクターから端子を抜くには専用工具の端子抜きを使用すると簡単に抜くことが出来ます。
端子が抜けるとモーター単品の取り外し、移植が可能になります。
移植前にしっかりと清掃しておきます。
CONTROL SLIDE DR ATに組み付ける際は付属してくるボルト・ビス・カラー・タイラップを使用して組み付けます。カラーは忘れずに組み込みましょう。
しっかりボルトも締め付けます。
移植完了後のモーターです。ハーネスの経路等入念にチェックしてから車両へ搭載します。
スライドドアモーターASSYを車両に復元
取付は取り外しと逆の手順になりますので詳細については割愛します。スライドドアモーターASSYの固定には上記で紹介したロングフレックスラチェットハンドルがおすすめです。今回の修理では大活躍しました。
後側ワイヤー固定ブラケットもセットします。
前側ワイヤー固定ブラケットもセットします。
リアウィンドウガイドRR LHも正しい位置で固定されているか入念に確認しましょう。
復元完了後の写真です。
最後に
いかがだったでしょうか。以上でオートスライドドア ワイヤー交換作業の解説を終了します。写真撮影や清掃時間を除くと3時間位あれば十分に終わると思います。慣れれば2時間も掛からないでしょう。しかし、大切なのは早く終わらせることではなく怪我をせずに丁寧に何度も確認をしながら落ち着いて作業することです。復元後に再度組み直しが発生すると心も体も萎えます。写真を撮影し、ケーブルやワイヤーの通す経路を確認しながら作業することをおすすめします。工賃節約と自身のレベルアップのためにトライしてみてはいかがでしょうか。特別な達成感を感じることができます。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら
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