はじめに
過去にリア ブレーキローター・パッド・センサーの交換方法について徹底解説した記事を書きましたが、今回はフロント ブレーキローター・パッド・センサーの交換方法について徹底解説した記事を書きます。
ここまで細かく交換手順やボルトの締め付けトルク値などを記載した記事は他には存在しないと思います。プロが教えたくない自動車整備のノウハウを惜しみなく紹介していますので車いじりの参考になれば幸いです。非常に長い記事になってしまっていますが、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を読むと以下のことがわかります。
・ブレーキパッド摩耗警告の警告灯が点灯してすぐの状態のパッド残量と走行可否
・ブレーキパッドセンサーの仕組み
・フロントブレーキローター・パッド・センサーの交換手順・締め付けトルク値
・CBSリセットについて
リア ブレーキローター・ブレーキパッド・センサーの交換記事についてはこちら↓
ブレーキ警告灯の点灯パターンや対処法についての記事はこちら↓
車両情報
・車名:BMW
・車台番号:WMWZC32080WN*****
・型式:DBA-ZC16
・原動機の型式:N18B16A
・総排気量又は定格出力:1.59L
・ボディカラー:ライトホワイト(B15)
・モデルイヤー:前期2011年1月〜2014年8月
・初度登録年月:2013年(平成25年)3月18日
購入部品
今回購入した部品について紹介します。購入金額は3点合計で27,071円でした。ローターについては摩耗限度がローター固有で設定されており、このローターの摩耗限度はMIN TH 22.4mmです。余裕で下回っていましたので今回新品に交換しております。
開梱した写真が以下の状態です。ブレーキローターは銀色にコーティングされています。
・部品名称:Brake Discs Coated (ブレーキローター FR 左右2枚セット)
・メーカー:metelli
・部品番号:23-1380C
・Disc φ 307.0mm
・Surface Th 24.0mm
・Protection Th min.22.4mm
・部品単価:16,060円
・BMW純正部品番号(参考):34119811538
・部品名称:Brake Pads(ブレーキパッド FR 左右セット)
・メーカー:metelli
・部品番号:22−0768−0
・部品単価:6,500円
・BMW純正部品番号(参考):34119804735
・部品名称:Pads Sensor(ブレーキパッドセンサー)
・BMW純正部品番号:34359804833
・部品単価:2,050円
3点合計金額:27,071円(税込)
なお、メーカーは異なりますが類似部品が以下のリンク先からも購入出来ます。
このセットだとパッドリテーナー(金属製のブラケット)とボルトもセットになっています!
ブレーキパッド新旧比較
作業紹介に入る前に交換前後のブレーキパッドを紹介します。ブレーキパッドが摩耗して、ブレーキパッドセンサーが断線し、警告灯が点灯してすぐの状態が以下です。以前交換したリアのブレーキパッドはブレーキパッドセンサーが無い側のブレーキパッドがかなり減っていましたが、フロントは左右で同等の減り方でした。ブレーキパッド摩耗警告の警告灯が点灯してもすぐにブレーキが効かなくなることはありませんので落ち着いて対処しましょう。(欧州車はかなり安全マージン高めです)
ブレーキパッドセンサーの仕組み
MINI CROSSOVER R60のブレーキパッドセンサーはフロント側がLHの助手席側、リア側がRHの運転席側にそれぞれ1箇所ずつ取り付けてあります。(車両としては計2箇所)
仕組みはブレーキパッドセンサーがブレーキパッドに取り付けてあり、ブレーキパッドが摩耗してくると、パッドと一緒にセンサーもブレーキローターに接触して摩耗し、センサー内部の接点が削れてブレーキパッドセンサーが断線するようになっています。断線するとECU(エレクトリックコントロールユニット)との信号のやりとりができなくなるためメーターに警告灯を点灯させます。
作業紹介
車両のリフトアップ
MINI CROSSOVER R60 ZC16をリフトアップする際は以下の部分にリフトマウントをセットします。
リフトマウントをセットした状態が以下の写真です。フロアジャッキでジャッキアップして馬をセットする場合も同じ箇所に馬をセットします。
ホイールの取り外し
完全にリフトアップさせてしまう前にタイヤが地面に接地している状態でホイールボルトを緩めておきます。強力なインパクトレンチをお持ちの場合はリフトアップ後でも問題なくホイールボルトを緩めることが出来ます。
ソケットの二面幅は17mmです。国産車と比較してボルトの締め付けトルク値が140N・mと大きいため腕の長さが長いスピンナーハンドルがあると楽に緩めることが出来ます。
早回しにはこの電動インパクトがおすすめです。トルク値は小さいですが本体重量が軽く長時間使用しても疲れません。
また、欧州車は国産車と異なりホイール固定が”ナット”ではなく”ボルト”ですのでホイールの取り外しにはガイドボルトがあると便利です。
タイヤを取り外した際はタイヤの溝の深さや釘などの異物が刺さっていないかなども併せて点検しましょう。タイヤの溝が1.6mm以下になっていると車検は通りません。以下のリンク先をご覧いただき、安くタイヤを交換しましょう。
ホイールを外すとようやくスタートラインに到着です。
フロントブレーキキャリパーの取り外し
ブレーキキャリパーの取り外しには”フロントブレーキガイドネジ”を緩めます。このネジの諸元は以下の通りです。
・六角ネジ ロックタイト(緩み留め)塗布あり
・二面幅 13mm
・締め付けトルク値 35N・m
締め付けトルク値はそこまで大きくないですが、ロックタイトが塗布されており車両によっては固着してなかなか外せないものもありますので緩める際は腕の長いストレートタイプのめがねレンチがおすすめです。
ネジを完全に取り外すには供回りを防ぐために薄い17mmのスパナが必要です。また、早回しにはギアレンチがあると楽に作業が出来ます。
下側はKTC neprosのNMS2-17でも入りましたが上側は下側より狭く入りません。さらに薄い工具がおすすめです。
取り外したブレーキキャリパーは自重でブレーキホースが伸びるのを防ぐために100均のS字フックを使ってスプリング部分に引っ掛けておきます。
パッドリテーナー取り外し&清掃
新品のブレーキパッドを取り付ける前に清掃します。欧州車のブレーキダストは国産車と比較にならないほど大量に発生します。ブレーキダストは健康にも非常に悪影響を与えますので間違ってもエアブローなどはせずに掃除機で吸い取るかパーツクリーナーを使って拭き取るようにしましょう。
パッドリテーナーの取り外しにはマイナスドライバーを使用すると簡単に外せます。
今回は購入したブレーキパッドに新品のパッドリテーナーが付属していませんでしたので清掃して再利用しますが、本来は交換が推奨されています。
ブレーキローターの取り外し&取り付け
ブレーキローターを固定しているネジを緩めます。このネジの諸元は以下の通りです。
・六角穴付きネジ M8×14
・六角穴サイズ 6mm
・締め付けトルク値 16N・m
インパクトレンチで緩めるかもしくはブレーキペダルを踏んだ状態で6角レンチ等を使用して緩めます。
緩めた後の状態が以下の写真です。
ローターを外すにはトルクメンバー(キャリパーサポート)を取り外す必要がありますので車両内側よりボルト2本を緩めます。このネジの諸元は以下の通りです。
・六角ネジ M12
・二面幅 16mm
・締め付けトルク値 110N・m
このネジも熱等で固着していることが多いので腕の長い工具を使用して緩めます。
トルクメンバー(キャリパーサポート)が外せましたら内側から樹脂ハンマー等でローターを叩くとローターが外せます。ローターが勢いよく外れると落下して非常に危険ですのでホイールセッティングボルトを取り付けておくと安全に作業が出来ます。
新品のローターを取り付ける前に接触面の清掃も忘れずに実施します。
新品のローターをセットしてブレーキローターを固定していたネジで締め付けます。
締め付けはブレーキペダルを踏んだ状態、もしくは以下のようなバールを駆使して締め付けます。当たり前ですが、”ブレーキは重要保安部品”ですのでトルク管理は必須です。もしもトルクレンチを持っていないなら作業をするべきではありません。
購入を検討されている方にはこちらの記事がおすすめです↓
また、トルクとは?という方にはこちらの記事がおすすめです↓
ピストンの押し戻し
新しいブレーキパッドを取り付けるにはピストンを押し戻す必要があります。専用工具を使用すると楽に作業が出来ます。ウォーターポンププライヤー等で作業する方が多いですがピストンを均一に押せない点やブーツ等を傷つけるリスクがありますので、おすすめはできません。
専用工具といってもASTROPRODUCTS製の安物でも十分作業は出来ます。ピストンを押し戻すとキャリパー内部のブレーキフルードがサブタンクまで戻ってしまい最悪のケースではサブタンクからブレーキフルードが溢れますので、ブレーキキャリパーについているブリーダープラグからブレーキフルードを排出しながらピストンを押し戻すのがベストなやり方です。ちなみにMINIのフロント側ブレーキブリーダープラグの二面幅は11mmです。
ブレーキフルードを抜く場合はワンウェイバルブを接続したチューブを使用して作業するのがおすすめです。
新品パッドを取り付ける場合は完全にピストンを押し戻します。
ブレーキキャリパーの取り付け
ブレーキパッドを取り付ける前にスライドピンも外して清掃しグリスアップすることをおすすめします。このスライドピンが動くことでブレーキパッドが減ってきてもキャリパーが動いて制動力が出ます。
各部のグリスアップにはWAKO’Sのブレーキプロテクターがおすすめです。
トルクメンバー(キャリパーサポート)側にブレーキパッドを取り付けてから車両にセットすると楽に作業できます。グリスはパッドとパッドリテーナーが接触する部分やピストン、キャリパーが接触する部分に薄く均一に塗布します。
ローターに当たらないようにそーっとセットします。
トルクメンバー(キャリパーサポート)をボルトでステアリングナックルに固定します。ここでもトルク管理は必須です。110N・mで上下を均一に締めていきます。
ブレーキキャリパーを元の状態に戻して、フロントブレーキガイドネジを35N・mで締め付ければブレーキローター・パッドの交換作業は完了です。
パッドセンサーの交換
フロントは助手席側にパッドセンサーがありますので新品のブレーキパッドにパッドセンサーを取り付けます。配線はブレーキキャリパーの中を通すことを忘れずに作業しましょう。コネクターはホイールハウスの奥側にあります。配線を辿れば見つかります。コネクター内部の端子の向きに注意して結線しましょう。
交換完了後
作業完了後の写真が以下です。
ブレーキ等の車両に2個以上ある部品は、万が一、向きや作業がわからなくなった場合でも反対側を確認できるため、片側ずつ作業することをおすすめします。
また、入念に締め付け忘れや取り付け忘れがないかどうかも点検しましょう。ブレーキ整備のミスは事故に直結しますので入念なチェックを忘れずに実施しましょう。
作業完了後にはCBSのリセット作業も忘れずに実施しましょう。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら
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