自動車整備士が教えるエンジンオイル交換 トヨタ ハイエースで徹底解説

KDH201V HIACE

はじめに

インターネットの普及により有益な情報が一昔前よりは簡単に入手できるようになりました。しかしながら、欲しい情報の核心的な部分は公開されておらず肝心な部分が分からない事もよくあります。

国産車は日本自動車整備振興会連合会が会員向けに提供しているFAINES(ファイネス)やオーナー自らが正規ディーラーで購入や問い合わせすることで、整備要領書が確認出来ますが、一般ユーザーにとっては馴染みが無く、読み取り方法も独特で理解しづらいと思います。

そこで今回は、トヨタ ハイエース(TOYOTA HIACE) LDF-KDH201Vエンジンオイル交換、エンジンオイルフィルター交換(エレメント交換)について徹底解説します。作業におけるカンコツや、各部位の締め付けトルク値についても実際の作業写真を交えて解説します。

ハイエースは販売台数が非常に多く事業で使われている方はもちろんのこと、キャンピングカーの種車等でも広く愛用されています。定期的なメンテナンスをオーナー自らが行うことで愛車の状態の把握ができ不具合を未然に防ぐことが出来ます。この記事をご覧になりご自身でエンジンオイル交換に挑戦される方が一人でも増えれば幸いです。

また、写真だけでなく動画でも確認したい!という方に向けてYouTubeも公開していますので併せてご覧いただければ幸いです。”高評価“と”チャンネル登録“もよろしくお願い致します。

さらにエンジンオイル交換以外にも様々な記事を公開しています。併せてご覧ください。

車両情報

・車名:トヨタ
・型式:LDF-KDH201V
・原動機の型式:1KD
・総排気量又は定格出力:2.98L
・初度登録年月:2011年(平成23年)10月

購入部品

エンジンオイル交換・オイルフィルター交換にあたり事前に準備した部品は以下の通りです。順に解説します。

エンジンオイル

エンジンオイルはトヨタ純正のDL-1 0W−30 4L缶を2缶準備しました。ちなみに部品番号は08883-02905です。カー用品店に行かなくても直接、以下のリンク先から格安で購入できます。

また、エンジンオイルはペール缶(20L)で購入するとさらに安く購入できます。長く維持していく予定の車の場合は確実にこちらがおすすめです。部品番号は08883-02903です。

エンジンオイルフィルター(エレメント)

エンジンオイルフィルターはトヨタ純正部品を準備する場合、部品番号は90915-20003です。

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今回準備したオイルフィルターはDrive Joy(DJ)製のオイルフィルターです。DJ製の場合、部品番号はV9111-0103です。DJ製も純正同様に安心して使用できます。

ドレンプラグガスケット(ドレンパッキン)

ドレンプラグガスケット(ドレンパッキン)は変形してドレンボルトの座面とオイルパンに密着することでシールする仕組みとなっており、再使用不可部品ですので必ず交換しましょう。一度締め付けたドレンプラグガスケットは塑性変形してしまう為、再締め付けの際に当たりが変わることで漏れに繋がります。

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ポイパック

エンジンから排出されたエンジンオイルを処分する際にはポイパックがあると廃油処理が簡単です。ハイエース(LDF-KDH201V)の場合、排出量は約6.5Lですのでポイパックのサイズは6.5L用が丁度良いです。

フィルターレンチ

ハイエース(LDF-KDH201V)のオイルフィルターのサイズは72.5mmです。今回はKTCのオイルフィルタレンチを準備しました。型番はAVSA-073です。

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オイルジョッキ

オイルジョッキは蓋があると埃・虫の混入が防げますので蓋付きのもので5Lのものが重量は重くなりますがオススメです。

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作業紹介

シート跳ね上げ

ハイエース(LDF-KDH201V)やキャラバンのような商用車のエンジンの位置はご存知の方も多いですが、運転席・助手席シートの真下にあります。よって、エンジンオイルを交換する際にはシートの跳ね上げ作業が必要です。跳ね上げ方については順に解説します。

助手席シート下のフロアカーペットをめくるとシートロックが出現します。

助手席側のシートロックが以下の写真です。

運転席側のシートロックは以下の写真です。

指でシートロックを持ち上げると簡単にロック解除できます。解除する際にロックが硬い場合はシートを上から押さえながらロック解除するとより簡単に解除できます。

助手席側シートロック解除後

運転席側も同様にシートロックを解除します。

運転席側シートロック解除後

跳ね上げたシートを車両に固定するには助手席シート横にある樹脂製の部品を使用します。

シートの角度を前側に倒し、シートを跳ね上げて、Bピラーにある突起に樹脂製の部品を引っ掛けてシートを固定します。

オイル量の把握

エンジンオイルを抜く前に、車両が水平になっていることを確認し現状のオイル量をオイルレベルゲージを使い確認します。

オイルレベルゲージの使用方法は、オイルレベルゲージをエンジンから引き抜き、毛羽立ちにくいショップタオル等を使用して、レベルゲージ先端のエンジンオイルを拭き取り、再度エンジン内に挿入し引き抜きます。そしてレベルゲージに付着したエンジンオイルの位置によりオイル量を把握します。

交換前のオイル量を把握する事はエンジンオーバーホールの要否判断に繋がりますのでとても大切です。ちなみに、車種によっても差はありますが、オイルレベルゲージのHigh(上限)とLow(下限)の差は約1Lとなります。

フィラーキャップ・オイルレベルゲージの取り外し

ドレンボルトを緩める前にフィラーキャップ(注ぎ口のキャップ)とオイルレベルゲージを抜いておくとエンジン内部に空気が入るため、早くエンジンオイルを抜くことができます。

フィラーキャップを外した際は、フィラーキャップの中央部が乳化(エンジンオイルと水分が混ざって白くなる現象)していないかも点検しておきます。

作業スペースの確保

フロアジャッキを使用し、車両をジャッキアップします。ジャッキアップについてはこちらの記事をご覧ください。安全なジャッキアップ方法について解説しています。

オイルドレンプラグ位置

ハイエース(LDF-KDH201V)のオイルドレンプラグ(ボルト)は車両のフロア側(下側)にあります。アンダーカバーにサービスホールが設定されており、オイル交換のみであればアンダーカバーを取り外さずに作業できます。

エンジンオイルドレンプラグ(ボルト)取り外し

エンジンオイルドレンプラグの二面幅は14mmです。アンダーカバーを取り外さない場合はソケットレンチ等を使用してプラグを緩めます。

またオイル排出の際には下記リンクのような専用工具があると火傷やオイル汚れのリスクを無くせます。

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エンジンオイル排出量の把握

ハイエース(LDF-KDH201V)のようなエンジンオイル注入後の油量確認に時間が掛かる車種の場合は、エンジンオイル排出量を把握することが非常に重要です。排出量の管理は専用の計量カップの使用や自作トレイ等を使用して行います。

ちなみに私は以下の100均で販売されているトレイに目盛りを自分で記載して使っています。

100円均一で販売されているトレイ

今回のハイエース(LDF-KDH201V)のエンジンオイル排出量は約6.5Lでした。排出量と同量の新油を注入します。

トレイの中の油量を確認する際はライトをトレイの上から照射すると確認しやすいです。

ドレンボルト取り付け

ドレンボルトをパーツクリーナーで清掃し、新しいドレンプラグガスケット(ドレンパッキン)をドレンボルトにセットして車両に取り付けます。車両側も併せてパーツクリーナーで清掃します。

ガスケットは再使用不可部品です。必ず交換しましょう。再使用すると普通にエンジンオイルが漏れます。締め付けトルクは25.0N・mです。トルクレンチを使用して締め付けます。

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トルク?という方はまずはこちらの記事をご覧ください。自動車整備においてトルク管理は非常に重要です。

トルクレンチおすすめ記事も書いています。参考にしていただければ幸いです。

エンジンオイルフィルター位置

ハイエース(LDF-KDH201V)のエンジンオイルフィルターは車両のフロア側(下側)から見るとかなり上の位置にあり、交換する上で非常に整備性が悪いように感じます。ところが、ハイエースは室内側にサービスホールが設定されており、オイルフィルターはとても簡単に交換できます。こういった改善がさすが”世界のトヨタ”だと思います。

スライドドアを開き、バルクヘッド(隔壁)部分のフロアカーペットをめくるとサービスホールが出現します。

サービスホールを固定しているボルト3本を2面幅10mmのソケットレンチ等で緩めます。

サービスホールが固着して剥がれない場合は樹脂ヘラを使用して剥がします。

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サービスホールを開けると目の前にオイルフィルターが出現します。

エンジンオイルフィルター取り外し

ハイエース(LDF-KDH201V)のエンジンオイルフィルターはフィルターレンチを使用して取り外します。オイルフィルターのOリングが熱でエンジン側に固着している場合が多く、取り外し時は結構な力が必要です。腕の長い工具を使うと簡単に外せます。

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エンジンオイルフィルター取り付け

取り付け面に砂等のゴミが残っているとゴムパッキンを傷つけるリスクがありますので、新しいフィルターを取り付ける前にエンジン側の取り付け面をショップタオル等を使用して清掃します。

オイルフィルター取り付け部 清掃前
オイルフィルター取り付け部 清掃後

※ちなみにオイルフィルターを取り外した際に溢れ出てくるエンジンオイルはオイルフィルター取り付け部の下にある穴からエンジンオイルドレンプラグ側へドレンホースを経由して排出されます

新しいオイルフィルターのパッキンの周囲に新しいエンジンオイルを指で塗布します。

オイルフィルターの締め付けは『オイルフィルターがエンジン側取り付け面に当たってから3/4回転締め付ける』と適正な締め付けトルクになります。

エンジンオイルフィルター交換後の写真が以下です。復元は取り外しと逆の手順で行います。

エンジンオイル注入

エンジンオイルを注入する前に、深呼吸してドレンボルトは締めたかな?オイルフィルターは締めたかな?と確認する事が非常に大切です。床に新油をぶちまけないようにしましょう。

エンジンオイルが注入できましたら、フィラーキャップを閉めて、オイルレベルゲージを戻し、エンジンを始動し、エンジンオイルを循環させた後に20分以上経過してから、オイル量をオイルレベルゲージで確認します。少なければさらに補充してレベルゲージの上限に合わせれば作業完了です。

なお、万が一、エンジンオイルを入れ過ぎてしまった際は落ち着いてこちらの記事をご覧ください。

最後に

いかがだったでしょうか。エンジンオイル交換は自動車整備(車いじり)の中でも初歩的な作業ですが、突き詰めるとかなり奥が深いことが分かっていただけたかと思います。定期的なエンジンオイル交換はエンジンを良い状態で維持していくのに最良の手段です。DIYでやるには一番オススメな作業です。

エンジンオイル交換以外にも車検整備について作業別にまとめた記事も公開しています。是非ともご覧ください。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら



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