はじめに
マイカーをお持ちの方で、ある日突然バックドアが開かなくなった(もしくは、閉まらなくなった)ことはないでしょうか?
バックドアが閉まらないことももちろん困りますが、その何倍もバックドアが開かないことは困ります。
理由は、修理する際にドアロックという部品を新品に交換するのですが、ドアが閉まらない場合はドア自体は開いていますので簡単に部品交換が出来ます。しかしながら、ドアが開かない場合は部品を交換したくても内装部品も外せないため困難を極めます。
正規ディーラーに問い合わせても内装部品を壊して無理やり交換が必要になるため、修理代も高額です。と冷たい回答をされます。
国産車は日本自動車整備振興会連合会が会員向けに提供しているFAINES(ファイネス)やオーナー自らが正規ディーラーで購入や問い合わせすることで、整備要領書が確認出来ますが、欧州車などの輸入車になると途端に開示されている情報が減ってしまいます。
そこで今回は、ドイツ車であるBMW MINI DBA-ZC16 CROSSOVER R60を用いて、自動車整備士である私が内装を壊さずに開かなくなったバックドアのドアロックを交換する方法について徹底的に解説します。
同じ不具合に遭遇した方にとっては有料級の内容になると思いますが、他車種にお乗りの方にとっても作業の流れが把握できますので価値のある内容になると思います。
この記事をご覧になりご自身でドアロック交換に挑戦される方が一人でも増えれば幸いです。
バックドア ドアロック交換以外にも様々な整備記事を公開しています。是非ともご覧ください。
車両情報
・車名:BMW
・車台番号:WMWZC32080WN*****
・型式:DBA-ZC16
・原動機の型式:N18B16A
・総排気量又は定格出力:1.59L
・ボディカラー:ライトホワイト(B15)
・モデルイヤー:前期2011年1月〜2014年8月
・初度登録年月:2013年(平成25年)3月18日
購入部品
今回はBMW 純正 新品のロック トランク リッドを準備しました。
部品番号:51 24 9 802 312
部品名称:ロック トランク リッド
部品単価:13,462円
BMW純正部品ですのでMINIのロゴマークも部品に刻印されています。
裏面の写真は以下の通りです。製造メーカーはWiTTE AUTOMOTIVEです。
今回の”バックドアが開かない”不具合において最重要ポイントを解説します。それはこのロック トランク リッドの赤丸の部分を指で操作するとロック解除ができることです。具体的には作業紹介で解説しますが、ロック トランク リッドを固定しているボルトを緩めて浮かせて、赤丸部分を指で探りながらロック解除をすることで開かなかったバックドアを室内側から開けることが出来ます。
作業紹介
作業スペースの確保
リアシートを倒します。
トランクルームに入るスペースが生まれます。
リアシェルフ取り外し
リアシェルフを取り外します。以下の写真がリアシェルフです。
リアシェルフを固定溝から浮かせて取り外します。
下側から軽く手で叩くと浮き上がります。
反対側も同様に浮かせます。
リアシェルフ固定コードを車両から取り外します。
トランクルームカーペット取り外し
トランクルームカーペットを車両から取り外します。以下の写真がトランクルームカーペットです。
トランクルームカーペットを車両後方に引いてロックを外し、取り外します。
ロックが外れた状態の写真が以下です。
反対側も同様にロックを外します。
車両の外に取り出します。
トランクルームシルカバー取り外し
ロックトランクリッドの上に取り付けられているトランクルームシルカバーを取り外します。以下の写真がトランクルームシルカバーです。
樹脂製のリベット(固定クリップ)を取り外します。
KTC製のクリップリムーバーを使用してリベットを取り外します。
中心のピンを抜き、次にベース部分を引き抜きます。
反対側も同様に取り外します。
E型トルクスソケット E10を使用して六角丸型ボルト(M6×55)を緩めてリアフロア カーペット サポート LH & RHを取り外します。
2本のボルトを緩めます。
リアフロア カーペット サポート LHを取り外した後の車両側の写真です。
T30トルクスビットを使いトルクスボルトワッシャー付き(M6×22)を緩めます。
ボルトを取り外した後の写真が以下です。
反対側も同様に取り外します。
トランクルームシルカバーを固定しているリベット、ボルトは取り外せましたがトランクルームシルカバーの左右にあるインサートフロアベースRH、LHがトランクルームシルカバーに干渉するため、これらも取り外していきます。なお、インサートフロアベースを取り外すには先に車両中央部にあるセンタートランクルームカーペットホルダー&トランクルームフロアカーペットベースを先に取り外す必要があります。
トランクルームフロアカーペットベース取り外し
トランクルームフロアカーペットベース(車両後方側)を固定しているタッピングスクリューカラー付(2×19)2本/片側をT20トルクスビットを使い緩めます。
緩めた後の写真が以下です。
反対側も同様に緩めます。
トランクルームフロアカーペットベースを上方向にひっぱり取り外します。
センタートランクルームカーペットホルダー取り外し
センタートランクルームカーペットホルダーを固定している二面幅が10mmのボルト4本をソケットレンチを使い緩めて、センタートランクルームカーペットホルダーを取り外します。
インサートフロアベース取り外し
インサートフロアベースを固定しているタッピングスクリューカラー付をT20トルクスビットを使い緩めます。
以下の写真でトランクルームシルカバーとインサートフロアベースが干渉している状態が良くわかると思います。
インサートフロアベースとボルトで共締めされているフロアカーペットサポートを固定している六角丸型ボルト3本(M6×55)をE型トルクスソケットE10を使用して緩めて、フロアカーペットサポートを取り外します。
また、反対側も同様に取り外します。
インサートフロアベースを固定している六角ボルト ワッシャー付きをT20トルクスビットを使い緩めます。
インサートフロアベースが外せる状態になりました。
インサートフロアベースを取り外した状態が以下の写真です。
反対側も同様に外します。
インサートフロアベースを取り外した状態が以下です。
これでようやくトランクルームシルカバーの下にある、ロックトランクリッドにアクセスできるようになりました。
ロックトランクリッド取り外し
トランクルームシルカバーを上に引き上げて4箇所のクリップを取り外します。クリップを外すとトランクルームシルカバーが上下にある程度動き、工具を挿入するスペースが生まれます。
トランクルームシルカバーを浮かせながらロックトランクリッドの固定ボルト(M8×22)2本を二面幅13mmのギアラチェットで緩めます。
ロックトランクリッドを固定しているボルトはギアラチェットを駆使すると隙間から外せます。
ボルトの2面幅は13mmです。
固定ボルトはロックトランクリッドの左右にそれぞれ1本、計2本ありますので両方取り外します。
ロックトランクリッドの下側を指で持ち上げてハーネスコネクターを指で取り外します。
赤いコネクターが取り外したロックトランクリッドのコネクターです。
購入部品の章でも解説しましたが、ロックトランクリッドの赤丸の位置を指で操作して、ロックトランクリッドのロックをリリースさせドアロックを解除します。バックドアが開くとようやく新しいロックトランクリッドへ交換できます。
ロックトランクリッド取付
新品のロックトランクリッドにハーネスコネクターを挿入します。
ロックトランクリッドを車体に固定する際には旧部品が取り付けられていた位置を参考にしつつ、バックドアヒンジとの位置関係を再確認しながら固定ボルトで固定します。
ロックトランクリッドの位置がヒンジに対してセンターからズレているとバックドアを閉めるたびにロックトランクリッドに負荷がかかり、今回のようなロックトランクリッド内部の樹脂部品が欠けることに繋がります。慎重に位置関係を確認しましょう。
ロックトランクリッド固定にはトルクレンチを使用しましょう。締め付けトルク値は19N・mです。
ロックトランクリッドが固定できれば作業は折り返しとなります。
車内を清掃しながら復元すれば作業は完了です。取付は取り外しと逆の手順になりますので割愛します。
ロックトランクリッド新旧比較
車両から取り外したロックトランクリッドは左側です。ロックトランクリッドの内部部品が破損しているのが確認できました。原因はもちろん経年劣化ですが、そもそものバックドアの建付が悪くヒンジがロックトランクリッドにスムーズに入っていなかったことにより毎回衝撃が発生し、内部部品の破損に繋がったと推測されます。
使用工具紹介
今回作業で使用した工具を紹介します。これ以外には作業灯は必須アイテムです。
最後に
いかがだったでしょうか。昨日まで何事もなく使えていたバックドアが突然開かなくなると非常に不便を感じるだけでなくメーカーに対する不信感も高まります。こういった迷惑度の高い不具合はバックドアに室内側から開け閉めできるハンドルを設定する等の再発防止対策を打って欲しいものです。
いづれにしてもこの記事をご覧頂き、高額な修理代を回避して部品代だけで修理が完了することを願っています。
ロックトランクリッド交換以外にもたくさんの整備記事を公開しています。是非ともご覧くださいませ。
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