はじめに
BMW MINI R60 クロスオーバーのA/Cコンプレッサー・オルタネーターはクランクプーリーを介してベルトで駆動されています。よってゴム製のベルトが劣化して破断してしまうと発電が停止し、たちまちエンジン不動に陥ってしまいます。
また、整備性が良い車種であればベルト交換は一瞬で完了しますが、中でも整備性が非常に悪いMINIの場合はベルト交換も一筋縄ではいきません。
理由としては、ベルト交換に入るための前段取りが長いことやベルト周辺の作業スペースが非常に狭いこと、ベルト交換の際にオートテンショナーを緩めてベルトの張りを無くすには”専用工具（SST）”が必要なこと等が起因しています。
国産車は日本自動車整備振興会連合会が会員向けに提供しているFAINES（ファイネス）やオーナー自らが正規ディーラーで購入や問い合わせすることで、整備要領書が確認出来ますが、欧州車などの輸入車になると途端に開示されている情報が減ってしまいます。
そこで今回は、ドイツ車であるBMW MINI DBA-ZC16 CROSSOVER R60を用いて、自動車整備士である私がドライブベルト交換方法について徹底的に解説します。
ここまで詳しく解説した記事は他には存在していませんので有料級の内容になると思いますが、包み隠さず全て無料で公開します。
この記事をご覧になりご自身でドライブベルト交換に挑戦される方が一人でも増えれば幸いです。
ドライブベルト交換以外にも様々な整備記事を公開しています。是非ともご覧ください。
車両情報
・車名：BMW
・車台番号：WMWZC32080WN*****
・型式：DBA-ZC16
・原動機の型式：N18B16A
・総排気量又は定格出力：1.59L
・ボディカラー：ライトホワイト（B15）
・モデルイヤー：前期2011年1月〜2014年8月
・初度登録年月：2013年（平成25年）3月18日
購入部品
ドライブベルト交換にあたり、必要な部品・専用工具（SST）を紹介します。ベルトは優良OEM製品を選びました。
・BMW純正部品名称：溝付きVベルト
専用工具（SST）はSTRAIGHT製の商品を選びました。
クロスオーバー R60のN18エンジンには左側の30mmを使用してベルトテンショナーを緩めます。
・型番：Art.19-3200
・商品名：ミニクーパー（N12/14/16/18）用 ベルトテンショナーレンチ 21/30(mm)
作業紹介
作業スペースの確保
フロアジャッキと馬を使用し、車両をジャッキアップします。ジャッキアップについてはこちらの記事をご覧ください。安全なジャッキアップ方法について解説しています。
タイヤ・ホイールの取り外し
ジャッキアップが終わりましたらタイヤ・ホイールを取り外します。
電動インパクトレンチを使用すれば、ジャッキアップした後のタイヤが空転する状態でもホイールボルトを緩めることが出来ます。
ホイールボルトを1本緩めましたらクイックホイールガイドピンを挿入し、タイヤ・ホイールが急に落下することを予防します。
ホイールアーチカバー（フェンダープロテクター）取り外し
ホイールアーチカバー（フェンダープロテクター）を取り外します。
先端サイズが2番のプラスドライバーを使用してネジ式クリップ を5個取り外します。
クリップを引き抜くにはクリップリムーバーを併用すると簡単に引き抜けます。
クリップリムーバーを使用して押し込み式クリップ1個を取り外します。
同様にクリップリムーバーを使用して押し込み式クリップ2個を取り外します。
取り外した後の状態が以下の写真です。
二面幅が8mmのネジ1本を緩めます。
同様に二面幅が8mmのネジ4本を緩めます。
ベルトプーリーカバーを固定しているボルトも先端サイズが2番のプラスドライバーを使用して緩めます。
ホイールアーチカバーを前方部分のみ取り外します。
すると今回交換したいドライブベルトがようやく現れます。
ドライブベルトの状態確認
交換前のドライブベルトの状態を確認しておきます。製造から10年、走行距離75,350Kmでベルトの溝部分に多数の亀裂があり、いつ切れてもおかしくない状態に陥っておりました。
フリクションホイール側から見たドライブベルトの状態です。
フリクションギアのテンションを緩める
フリクションギアに設定されているツマミを引き、テンションを緩めます。
ツマミを少し引き出した状態が以下の写真です。
ツマミをいっぱいまで引き抜くと切り欠きが出てきますので切り欠きを引っ掛けて固定しておきます。
ベルトテンショナー緩め作業
STRAIGHT製 ミニクーパー（N12/14/16/18）用 ベルトテンショナーレンチ 30(mm)を使用してベルトテンショナーを移動させロックピンを入れてベルトを緩めている状態を保持しておきます。
テンショナーに設定されている6角部分に今回準備したSSTを挿入します。
SSTを挿入した状態が以下の写真です。
STRAIGHT製 ミニクーパー（N12/14/16/18）用 ベルトテンショナーレンチ 30(mm)を使用してオートテンショナーを緩めます。ベルトテンショナーを左側に振るとベルトを緩める方向になります。
力が足りない場合はSTRAIGHT製 ミニクーパー（N12/14/16/18）用 ベルトテンショナーレンチ 30(mm)の末端部分に12.7sq.のエクステンションバーが組み合わせ出来るようになっています。
ベルトテンショナーレンチを掛けながらロックピンを挿入します。テンショナーに設定されているロックピンをエンジンルーム側から撮影した写真が以下です。ロックピンはホイールハウス側からもアクセスが可能です。
ロックピンを挿入した状態が以下の写真です。
テンショナーのロックピンを挿入することでドライブベルトがたわんでいる状態で保持が出来ます。
ドライブベルト取り外し
ドライブベルトを車両から取り外します。取り外しましたら新品と旧品で幅、長さを比較して問題がないことを確認してから車両へ組み付けます。
ドライブベルト組み付け
ドライブベルトを車両へセットします。
オルタネーター→クランクプーリー→A/Cコンプレッサーの順にドライブベルトを掛けます。
ベルトが掛かりましたら溝部を確認しながらオートテンショナーをSSTを使用して戻します。
ドライブベルト組み付け状態の再確認
二面幅が18mmのソケットレンチを使用してクランクプーリーを時計回りに回転させて取付状態を再確認します。
18mmのソケットレンチを使用します。
組み付け状態に問題がなければ、最後にツマミを戻してフリクションギアのテンションを掛けます。
以降の作業は取り外しと逆の手順になりますので割愛します。なお、クリップを再使用する場合は水で洗浄し砂や泥を落としてから組み付けるとクリップが割れるリスクを防ぐことが出来ます。
最後に
いかがだったでしょうか。BMW MINIのドライブベルト交換作業は国産車と異なり非常に面倒な作業に感じられたと思います。やり辛く、専用工具（SST）が必要な点で高額な工賃を請求される可能性も高いです。この記事をご覧いただき正しい知識と工具を使用して安全に作業され、支出を最小限にされることを祈っております。
ドライブベルト交換以外にもたくさんの整備記事を公開しています。是非ともご覧くださいませ。
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