はじめに
『最近エアコンの効きが弱いな。。。』、『涼しい時はよく冷えるのに暑くなってくると冷えないな。。。』と感じることはないでしょうか?
エアコンガス(冷媒)は配管の接続部にあるOリングの劣化やエバポレーターの接続部であるパッキンの劣化等が原因でよく漏れます。しかしながら、それらが正しく接続されている状態であっても経年劣化で徐々にエアコンガスは大気に解放されて減少していきます。
エアコンガスが減ることで熱交換の効率が低下してエアコンの冷え不良に繋がります。エアコンガスの補充は正規ディーラーや町工場、カーショップ等で実施できますが、ガスチャージホース(エアコンガスを補充する工具)とエアコンガスがあればオーナー自身で簡単に補充が出来ます。エアコンガスは過剰に補充するとこちらも冷え不良に繋がりますので適正な管理が必要です。
今回はエアコンガスの補充方法について自動車整備士である私が徹底解説します。参考になれば幸いです。
車両情報
・車名:トヨタ
・型式:DBA-GRS200
・原動機の型式:4GR
・総排気量又は定格出力:2.49L
・初度登録年月:2008年(平成20年)6月
購入部品
今回準備した部品、工具を紹介します。
エアコンガスの種類は車両に合わせた仕様を選択します。仕様については車両のコーションラベルに記載されています。コーションラベルはエンジンルーム内に貼られていることが多いです。
諸元によるとエアコンガスの種類はHFC134aで、規定の充填量は450gです。HFC134aは90年代から製造された車両に採用されている最もポピュラーなエアコンガスです。
エアコンガスはケース買いした方が割安ですが、1本ずつの購入ももちろん可能です。
エアコンガスを車両に補充するには専用の工具が必要です。以下のAmazonリンクから直接購入出来ます。
チャージホースとエアコンガスのセット品も設定されています。
また、もっとエアコンガスについて詳しくなりたい!というコアなオーナーにはマニホールドゲージがオススメです。低圧側だけでなく高圧側の冷媒圧も計測可能で真空ポンプに接続して真空引きも出来ます。
作業紹介
車両レイアウト解説
トヨタ DBA-GRS200 クラウンアスリートではHigh側のポートは以下の写真の赤丸の位置にあります。High側ポートには”H”の刻印がされたキャップがあります。
エアコンガスの量を目視で確認できるサイトグラスはHigh側ポートの横にあります。最近の車両では故障診断機で冷媒圧力等の情報がモニタリング出来るようになっていますので原価低減目的でサイトグラスが廃止されていることが多いです。よって目視での冷媒の流量判断は難しくなっていますが今回はサイトグラスがある車両で解説します。
作業においてチャージホースを接続しエアコンガスを補充するLow側のポートはバッテリーの左横奥にあります。
Low側には”L”の刻印がされたキャップがあります。
キャップはネジの緩め方向に回すと簡単に取り外せます。チャージホースを接続する前のLow側ポートの準備は以上です。
エアコンガス補充前の事前準備
エアコンガス缶単品の重量を計測します。計測結果は写真の通り、287gです。
チャージホース(エアコンガスを補充する工具)の重量も計量します。測定結果は写真の通り、213gです。
2点合計で500gです。エアコンガスを補充した後に再度重量を測定しエアコンガスの補充量を確認しましょう。
チャージホースにエアコンガス缶を取り付け
エアコンガス缶をチャージホースのバルブに取り付けます。バルブに取り付ける前にチャージホースのバルブの針の状態を確認してから取り付けましょう。以下の写真のように針が出たままの状態でエアコンガス缶を接続するとエアコンガスが漏れ出てきますのでバルブ上部の蝶ネジを回して針を引っ込めます。
以下の写真のように針が上に上がった状態でエアコンガス缶を接続します。
エアコンガスを車両に補充する際はバルブとエアコンガス缶の間からエアコンガスが漏れないようにしっかりとねじ込みましょう。
チャージホースを車両側に接続する
チャージホースのクイックカプラー側を車両のLow側ポート(低圧側)に接続します。ちなみにHigh側ポートとは寸法形状が異なるので誤着は出来ませんので安心して接続してください。接続の際はクイックカプラーの外側を上にスライドさせた状態でポートに押し込むと”カチッ”と接続されます。
エアパージ
エアコンガスを車両に補充する前にエアパージします。エアパージとはチャージホース内に滞留している空気を車両側のエアコンガスでチャージホースの外に押し出すことを言います。
やり方は非常に簡単です。車両のLow側ポートにクイックカプラー側を接続したままの状態で、エアコンガス缶が取り付けられているチャージホースのバルブ側のエアコンガス缶を少しだけ緩めてチャージホース内の空気を押し出します。
エアコンガス量をゲージで確認する
エンジンを始動し、エアコンを最大出力で作動させると低圧側の圧力は下がります。均衡するまでしばらく待ち、数値を確認しましょう。参考までにこの車両の補充前のエアコンガス圧は約32psi(0.22MPa)でした。なお、このチャージホースでは適正範囲が25〜55psiとなっています。
エアコンガス補充
チャージホースのバルブ上部にある蝶ねじを締め込み針をエアコンガス缶に突き刺し、再度蝶ねじを緩めてエアコンガスを車両へ補充します。ちなみにエアコンガスの補充は圧力差を利用していますので車両側の圧力よりもエアコンガス缶側の方が圧力が高いのでエアコンガスが車両へ注入されていきます。
エアコンガス補充時はエアコンガス缶の圧力が下がりエアコンガス缶が冷えてきますので凍傷を防ぐためにも手袋を着用して作業しましょう。また、エアコンガス缶を逆さまにした状態で補充すると液体のままエアコンガスが補充されますのでトラブルの原因になりますので注意しましょう。
サイトグラスとチャージホースのゲージを確認しながらエアコンガスが適量になった状態で補充を中止します。途中で補充を中止する場合は再度蝶ねじを締め込みます。車両からチャージホースのクイックカプラーを取り外しLow側ポートのキャップを取り付ければ補充作業は完了です。
エアコンガス補充量の確認
エアコンガス補充後のチャージホースとエアコンガス缶の重量を計測します。写真を撮り忘れましたが測定結果は447gでした。よって補充前の重量500gから差し引くと補充量は53gということがわかります。規定量が450gですので約11%減少していたと推定出来ます。
ちなみにエアコンガス缶単体の重量は85gですので冷媒のみの重量は202gということがわかります。
最後に
いかがだったでしょうか。意外と簡単にエアコンガスは補充が出来ます。しかしながら、エアコンステーションなどの専用設備を備えた工場へ投資すれば冷媒を全量回収して計測した後に再度補充が出来ますのでさらにシビアな管理が可能です。エアコンは冷えればそれで良いという方も非常に多いのも事実ですのでエアコンの冷えがいまひとつだなと感じた方はこの記事を参考にDIYで補充されてみてはいかがでしょうか?
エアコンガス補充以外にも様々な記事を公開しています。併せてご覧ください。
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