はじめに
国産車は日本自動車整備振興会連合会が会員向けに提供しているFAINES(ファイネス)やオーナー自らが正規ディーラーで購入や問い合わせすることで、整備要領書が確認出来ますが、欧州車などの輸入車になると途端に開示されている情報が減ってしまいます。そこで今回はドイツ車であるBMW MINIのタイヤ交換(タイヤ履き替え)作業についてDBA-ZC16 CROSSOVER R60を用いて徹底的に解説します。
数ある自動車部品の中で唯一路面と接している部品、それがタイヤです。たかがタイヤ交換と軽く考えずにとことんこだわって徹底解説します。同じ車種をお乗りのオーナーはもちろん、BMW MINIや欧州車にお乗りのオーナーにとっても有料級の情報になると思います。この記事をご覧になりご自身でタイヤ交換に挑戦される方が一人でも増えれば幸いです。
また、タイヤ取り付けに重要なトルク管理についてもっと詳しく知りたい!という方はこちらの記事もご覧ください。
さらに、写真だけでなく動画でも確認したい!という方に向けてYouTubeも公開していますので併せてご覧いただければ幸いです。”高評価“と”チャンネル登録“もよろしくお願い致します。
車両情報
・車名:BMW
・車台番号:WMWZC32080WN*****
・型式:DBA-ZC16
・原動機の型式:N18B16A
・総排気量又は定格出力:1.59L
・ボディカラー:ライトホワイト(B15)
・モデルイヤー:前期2011年1月〜2014年8月
・初度登録年月:2013年(平成25年)3月18日
使用工具一覧
今回タイヤ交換作業で使用した工具は以下の写真の通りです。作業紹介の中で順番に紹介します。
作業紹介
車両リフトアップ
タイヤ交換する際には車両をリフトアップする必要があります。2柱リフトやフロアジャッキ、シザーズジャッキ、パンタグラフジャッキ等を使用して車両をリフトアップします。
一般的にはフロアジャッキと馬を使用し、車両をジャッキアップします。ジャッキアップについてはこちらの記事をご覧ください。安全なジャッキアップ方法について徹底解説しています。
ホイールの取り外し
DBA-ZC16 CROSSOVER R60のホイールはM14の5本のボルトで固定されています。(国産車はナット、欧州車はボルトが主です)
ボルトの取り外しにはMakita 充電式インパクトレンチ TW004G、先端のインパクトソケットはKTC BP49-17(二面幅17mm)を使用します。インパクトレンチを使用するメリットは楽にボルトの取り外しができるだけでなく、車両をリフトアップした後のタイヤが接地していない状態でもボルトを緩めることができることです。
以下の写真だと分かりにくいですが、タイヤが接地していない状態からでもタイヤを固定せずにボルトを緩めることが可能です。DBA-ZC16 CROSSOVER R60のホイールボルトの締め付け指定トルクは140±10N・mと国産車と比較しても高トルクですが、このインパクトレンチを使用すれば一瞬で難なく緩めることが可能です。
欧州車は国産車と異なりホイールの固定が”ナット”ではなく”ボルト”ですので5本のボルトをすべて取り外してしまうとホイールが落ちてきます。そうならない為にもガイドボルトを1箇所に取り付けます。
車両からホイールを取り外した写真が以下の写真です。
タイヤを取り外す際に使用する専用工具も販売されています。タイヤのサイズが大きく重量があるタイヤを交換する際には非常に便利です。
ホイール取り付け面の清掃
車両側のホイールの取り付け面をワイヤーブラシ等で清掃します。同様にホイール側の取り付け面も清掃します。
清掃後にはパーツクリーナー等で汚れを除去します。
取り付けボルトの清掃
ホイールを取り付ける前に取り付けボルトの汚れもパーツクリーナー等を使用して落とします。汚れがひどい場合はワイヤーブラシ等を使用します。
マグネット付パーツトレイを使用するとボルトを立てて保管ができ、また取りやすいです。
ホイール取り付け
交換するホイール(今回はスタッドレスタイヤ)の穴位置とガイドボルトを合わせて車両にセットします。
ボルトをセットする際は必ず2〜3山、ネジが掛かるまで”手締め”してからインパクトレンチを使用して軽く締め付けます。
ホイール締め付け(トルク管理)
前輪を固定する際はブレーキを踏み込むかタイヤを接地させてからトルクレンチを使用して指定トルクまで締め付けます。一人で作業していて誰もブレーキを踏んでくれない!とお困りの方はこちらの方法がオススメです。突っ張り棒は100円均一でも販売されておりコスパ最強です。
DBA-ZC16 CROSSOVER R60の指定トルク値は140±10N・mですので130〜150N・mで締め付けます。
ホイールのような丸い物体を均一に締め付ける(=軸力を安定させる)には千鳥(ちどり)締付けがとても有名ですが、もう一歩進んだ締付方法があります。それは規定トルクに到達するまでのSTEPを段階的に分けることです。
二回目:規定トルクの75%程度のトルク設定値で番号順に締め付け
三回目:規定トルクで番号順に締め付け
このやり方については、個人的に参加したKTC(京都機械工具株式会社)主催のトルク講座でも『松・竹・梅』で締めることとして同内容を説明されていました。自分の車のホイールナットを締め付けることから試してみてはいかがでしょうか。(ホイールだと一回目:70N・m、二回目:105N・m、三回目:140N・mのイメージです)
タイヤ空気 補充
長期間使用していないタイヤを再使用する場合は空気の補充が必要です。最寄りのガソリンスタンド等で補充しましょう。私はASTRO PRODUCTSのエアーコンプレッサーを使用してガレージ内で補充できるように環境整備しています。空気圧が少ない状態で公道を走るリスクが無くせますのでエアーコンプレッサーの導入は非常にお勧めです。
ガレージ内のエアーホースの取り回しにはエアーホースリールがお勧めです。
タイヤ空気圧警告システム(RPA)リセット
DBA-ZC16 CROSSOVER R60にはRPAが採用されており、走行中に各タイヤ間の回転数をモニタリングしており基本回転数と比較して差があると警告灯を点灯させます。(空気圧が低下したタイヤの外径寸法が小さくなることを利用している)RPAを正しく機能させるためにはあらかじめタイヤ空気圧を適正値に調整し、システムの初期化を行う必要があります。
エンジンを掛け、車両を動かさない状態でリセット作業を行います。コンビネーションライトスイッチの▷BCと記載された左横のボタンを数回押して、▷SET/INFOを選択し、ボタンを長押しします。
タイヤの中にびっくりマーク”!”が表示されたマークと▷RESETが表示されますので長押しします。
表示が切り替わるとリセット作業は完了ですので車両を発進させます。走行している間に初期化が完了します。なお、初期化完了の表示等はありませんのでご安心ください。
最後に
いかがだったでしょうか。タイヤ交換作業は車いじりの中でも初歩的な作業ですが、突き詰めるとかなり奥が深いことが分かっていただけたかと思います。欧州車においても国産車と締め付け方法の違いなどありましたが基本的な考え方は同じです。路面と接地している唯一の重要部品ですので他人に任せず、この情報を活用いただき、オーナー自らが自信を持ってメンテナンスしていただければ幸いです。自分の作業の保証度を上げる為にもトルクレンチを使用したトルク管理をおすすめします。
タイヤ交換作業以外にもたくさんの整備記事を記載しています。是非ご覧くださいませ。
また、タイヤを取り外した際はタイヤの溝の深さや釘などの異物が刺さっていないかなども併せて点検しましょう。タイヤの溝が1.6mm以下になっていると車検は通りません。以下のリンク先をご覧いただき、安くタイヤを交換しましょう。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら
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