自動車整備士が教えるVR38エンジン スパークプラグ交換 R35 GTRで徹底解説

R35 GTR

はじめに

インターネットの普及により有益な情報が一昔前よりは簡単に入手できるようになりました。しかしながら、欲しい情報の核心的な部分は公開されていない事も多く肝心な部分が分からない事もよくあります。

国産車は日本自動車整備振興会連合会が会員向けに提供しているFAINES(ファイネス)やオーナー自らが正規ディーラーで購入や問い合わせすることで、整備要領書が確認出来ますが、一般ユーザーにとってはなかなか馴染みが無く、読み取り方法も独特で理解しづらいと思います。

そこで今回は、VR38エンジンのスパークプラグ交換ヘッドカバーガスケット交換(ロッカーカバーガスケット交換)について日産 R35 GTRを用いて徹底的に解説します。作業におけるカンコツや、各部位の締め付けトルク値についても実際の作業写真を交えて解説します。

同じ車種をお乗りのオーナーはもちろん、これからスパークプラグを交換しようと検討されているオーナーにとっても有料級の情報になると思います。この記事をご覧になりご自身で作業に挑戦される方が一人でも増えれば幸いです。

また、いきなりスパークプラグの交換はちょっと、、、とお考えの方にはまずはエンジンオイル、フィルター交換から初めてみてはいかがでしょうか。併せてご覧いただければ幸いです。

車両情報

・車名:ニッサン
・車台番号:R35-******
・型式:CBA-R35
・原動機の型式:VR38
・総排気量又は定格出力:3.79L
・初度登録年月:2009年(平成21年)12月

スパークプラグとは混合気に点火する装置のこと

ガソリンエンジンでは、シリンダー内で圧縮した混合気(ガソリン + 空気)に点火して燃焼させる必要があります。燃焼を適切なタイミングでよい火花で点火するのが点火装置(スパークプラグ)です。

スパークプラグは消耗品であり、交換頻度はメーカー毎に異なりますが、一般タイプの製品で15,000~20,000km、長寿命タイプ(白金プラグ・イリジウムプラグ)の製品で100,000kmほどがメーカーの推奨する目安です。

あくまでも”目安”であってそこまでの距離が保証されている訳ではありませんので”いつもと様子が違う”と違和感を感じた場合は早期の交換をおすすめします。

さらにスパークプラグのことを知りたい!という方はこちらの記事も併せてご覧ください。

購入部品

スパークプラグは日産純正部品 22401-JF01Dを6本準備しました。

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また、VR38エンジンのスパークプラグを交換するにはインテークマニホールドコレクタの取り外しが必須です。エンジンとインテークマニホールドコレクタの間にある鉄製のガスケット(パッキン)は再使用不可部品ですので、併せて準備が必要です。

さらに今回はスパークプラグ交換と一緒にヘッドカバーガスケット(ロッカーカバーガスケット)交換も併せて行いますのでヘッドカバーガスケットも準備しました。

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なお、スパークプラグ交換作業において車両の劣化状態によっては必要となりうる部品についても併せて紹介しておきます。

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使用工具一覧

今回の作業で使用した主な工具を紹介します。詳細については作業紹介の中で解説していきます。

作業紹介

エンジンカバー取り外し

VR38エンジンのスパークプラグ交換にはインテークマニホールドコレクタの取り外しが必須です。そのためにはインテークマニホールドコレクタの上に取り付けられているエンジンカバーを取り外す必要があります。

エンジンカバーの取り外しは5mmHEXを使用します。緩めるボルトは4ヶ所です。また、締め付ける際のトルク値は5.5N・mです。

エンジンカバーを固定している4本のボルトを取り外した写真が以下です。

エンジンカバーは真上に両手で持ち上げると簡単に外せます。

エアインレットホース&リサーキュレーションパイプ取り外し

2面幅が7mmのソケットレンチを使い、3ヶ所[エアインレットホース(バンク2)奥側、手前側、リサーキュレーションパイプ(バンク2)の奥側]のホースバンドを緩めます。また、締め付ける際のトルク値は4.5N・mです。

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KNIPEXのCobra(コブラ)を使用し、ホースクランプを緩めて、リサーキュレーションパイプ(バンク2)に組み付けられているリサーキュレーションバルブに接続されているホースを取り外します。

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ホースプラッカーの先端をエアインレットホースとリサーキュレーションパイプ(バンク2)の間、及びエアインレットホースと電子制御スロットル(バンク2)の間に挿入してホースを取り外します。

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さらにCobraを使用し、ホースクランプを緩めて、リサーキュレーションパイプ(バンク2)に接続されているリサーキュレーションホース(バンク2)を取り外します。また、リサーキュレーションパイプ(バンク2)にASSYされている過給圧センサーのコネクターとハーネス固定用のビルトインクリップを取り外します。

バンク1側も同様に取り外します。ホースバンドを緩めてリサーキュレーションバルブに接続されているホースを緩めた後の写真です。

バンク1側の過給圧センサーの写真が以下です。バンク2と同様にコネクターを取り外します。

バンク1、バンク2それぞれ取り外しが終わった後の写真が以下です。

インテークマニホールドコレクタ取り外し

バランスチューブに接続されているバキュームホースをCobraを使用しホースクランプを緩めて取り外します。

また、バランスチューブに固定されているビルトインクリップ2ヶ所をクリップリムーバーを使用し取り外します。さらにブラケットに固定されているハーネスをマイナスドライバー等で固定部を押して取り外します。

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Cobraでホースクランプを緩めて左右共にEVAPコネクタホースを取り外します。また、EVAPチューブ(フロント)を固定しているボルト2本を2面幅10mmのソケットレンチを使用し番号順(①→②)に緩めて取り外します。締め付ける際のトルク値は9.0N・mです。

Cobraでホースクランプを緩めてバンク1側のインテークマニホールドコレクタに接続されているEVAPホースを取り外します。また、インテークマニホールドコレクタに固定されている吸気圧センサーコネクターも取り外します。

バンク2側も同様にCobraでホースクランプを緩めてインテークマニホールドコレクタに接続されているEVAPホースを取り外します。さらに、インテークマニホールドコレクタに接続されているバキュームホースも取り外します。なお、このバキュームホースは劣化していることが多く予備品を購入した上で作業に入られた方が無難です。

Cobraでホースクランプを緩めてインテークマニホールドコレクタに接続されているPCVホースを取り外します。さらに、インテークマニホールドコレクタを固定しているボルト8本を以下の番号順(①→⑧)に緩めて取り外します。取り外しには2面幅10mmのソケットレンチを使用し、締め付ける際は取り外しと逆の番号順(⑧→①)にトルク値12.8N・mで締め付けます。

電子制御スロットル(バンク1,2)のコネクターを取り外し、インテークマニホールドコレクタを車両から取り外します。インテークマニホールドコレクタガスケットも併せて車両から取り外します。

インテークマニホールドコレクタを取り外した後の状態が以下の写真です。

インテークマニホールドコレクタ取付面清掃

インテークマニホールドコレクタ取り付け面を清掃します。毛羽立ちが少ないショップタオルを使用し清掃します。

ちなみに、インテークマニホールドからはバルブが確認できます。

取付面の清掃が完了した後の写真が以下です。清掃が完了しましたらゴミ・ブツ等のコンタミが入らないように養生しておきます。

ヘッドカバー(ロッカーカバー)取り外し

ヘッドカバーを取り外すためにヘッドカバーの上に配置されている部品を取り外していきます。

エンジンルームハーネスをヘッドカバーに固定しているビルトインクリップをクリップクランプツールを使用して取り外します。

イグニッションコイルを固定しているボルトを2面幅10mmのソケットレンチを使用して緩めます。なお、締め付ける際のトルク値は7.0N・mです。固定ボルトを緩めましたらイグニッションコイルカプラーを外してイグニッションコイルを取り外します。

全てのイグニッションコイルを取り外した後の写真が以下です。

ヘッドカバーを固定しているボルト10本を2面幅が10mmのソケットレンチで緩めて取り外します。なお、締め付ける際のトルク値はトルクレンチを使用して実測した上で7.0N・mとしました。

また、ヘッドカバーを固定しているボルトの真上にはさまざまな部品が配置されており、取付・取り外しにはユニバーサルジョイントやエクステンションバーが必須です。

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全てのボルトが外せましたら、ヘッドカバーに取り付けられているフレッシュエアホースをCobraでホースクランプを緩めて取り外し、ヘッドカバーを取り外します。

ヘッドカバーが固着してなかなか外せない場合は、マイナスドライバーではなく、バールを使用して取り外します。

バンク1,2共にヘッドカバーを外した後の状態が以下です。

スパークプラグ取り外し・取付

二面幅14mmのスパークプラグレンチを使用し、スパークプラグを取り外します。

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締め付ける際のトルク値は19.6N・mです。必ずトルクレンチを使用して締め付けましょう。

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ヘッドカバー取付面の清掃

ヘッドカバー取付面をスクレーパーやオイルストーンを使用して清掃します。なお、VR38エンジンのヘッドカバーの四隅には液体ガスケットが塗布されておりましたので、ヘッドカバーを取り付ける際には液体ガスケットの準備も必要です。

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幅の狭い箇所については先端が細いタイプが使いやすいです。

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清掃後のヘッドカバー取付面の写真が以下です。

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ヘッドカバー裏面清掃・ヘッドカバーガスケット取付

ショップタオルやパーツクリーナーを使用してヘッドカバーの裏面を清掃します。

清掃前
清掃後

なお、作業時間に余裕がある方は洗浄剤を使用した洗浄がおすすめです。

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洗浄が終わりましたらヘッドカバーガスケットを新品と交換します。

ヘッドカバー取付

復元は取り外しと逆の手順で行います。復元作業の中で最大の難所はヘッドカバーをボルトで固定する際にバンク2の奥側が配管と干渉して非常に狭いことです。ユニバーサルジョイントとウォルブエクステンションバーを駆使し、トルクレンチで締め付けましょう。

このボルトが一番狭いです
トルクレンチで保証しましょう
この組み合わせで使用しました

最後に

いかがだったでしょうか。紹介した作業手順通りに作業していけば問題なく完了できると思います。スパークプラグはエンジンを動かす中でも非常に重要な部品です。たかがスパークプラグ交換と安易に考えず、きちんとした工具を使用し、車種の設計値を確認の上での作業をおすすめします。

今回の作業以外にもたくさんの整備ノウハウを公開しています。是非ともご覧くださいませ。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら



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