はじめに
クランク角センサーは、自動車のエンジンコントロールシステムにおいて非常に重要な役割を担っている部品です。
このセンサーは、エンジンのクランクシャフトの位置や回転速度を検出し、その情報をエンジンコントロールユニット(ECU)に送信します。ECUはこの情報を利用して、燃料噴射のタイミング、点火タイミング、その他エンジンの動作に必要な調整を行います。
クランク角センサーに不具合があると、ECUが適切な指示を出せずエンジン不調に陥ります。
今回はエンジン不調ではなくクランク角センサーに設定されているO-ringからのオイル漏れが疑われますのでO-ringの交換作業について日産 GF-S15 シルビアを用いて徹底解説します。
また、今回はエンジンオイル&オイルフィルター交換作業に合わせてクランク角センサーのO-ringを交換します。クランク角センサーそのものを交換する場合も全く同じ作業内容になりますので参考になれば幸いです。
車両情報
・車種名称:シルビア spec R(ターボ)
・型式:GF-S15
・原動機型式:SR20
・初度登録年月:平成13年(2001年)11月
・車種記号:GBYARUYS15UD4E-BAB KH3(ボディカラー:黒) G(内装色)
1桁目(G)…2ドアクーペ
2,3桁目(BY)…SR20DET
4桁目(A)…後輪駆動(2WD)
5桁目(R)…右ハンドル
6桁目(U)…spec R エアロ
7桁目(Y)…手動6速
8,9,10桁目(S15)…S15
11桁目(U)…ターボ(EGI)
12桁目(D)…国内標準仕様
13桁目(4)…4人乗り
14桁目(E)…spec R エアロ仕様
15桁目(-)…標準仕様
16桁目(B)…プライバシーガラス(リアサイド、リアウィンドウ)
17桁目(A)…オーディオレス
18桁目(B)…キセノンヘッドランプ
クランク角センサー不調時の事例
S15シルビアにおいて、クランク角センサーが不調になると、様々なエンジン関連の不具合が発生します。具体的な事例を以下に紹介します。
1.エンジン不調
・エンジンが不安定になり、アイドリングが不安定になるまたはエンストする。
2.パフォーマンスの低下
・走行中にエンジンがもたつく。
3.MIL点灯
これらの問題は、クランク角センサーの信号が不正確であるためにエンジンコントロールユニット(ECU)が適切な燃料噴射量や点火タイミングを決定できないことに起因します。不調なクランク角センサーは、エンジンの性能低下だけでなく、燃料消費の増加や排出ガスの増加といった環境への影響も招くことになります。そのため、これらの症状が現れた場合は、早急に修理が必要です。
クランク角センサー点検方法
GF-S15のクランク角センサーハーネス電源点検方法は以下の通りです。
・クランク角センサーのハーネスコネクターを取り外します。
・キースイッチをONにします。
・クランク角センサーコネクター側3番端子〜アース間の電圧を測定します。
→電源電圧を示せば判定OKです。
次に、クランク角センサー単体の出力特性点検方法は以下の通りです。
・キースイッチをONにします。
・クランク角センサーシャフトを手でゆっくりと回し、1番、2番端子〜アース間の電圧を測定します。以下の出力を示せば単品判定OKです。
→クランク角センサー2番端子〜アース間(1°信号):約0.1V又は約5V
→クランク角センサー1番端子〜アース間(180°信号):約0.1V又は約5V
購入部品
今回購入した部品は以下の通りです。クランク角センサーに付属しているO-ring単品で部品設定があります。
・部品名称:O-RING
また、クランク角センサー自体を交換する場合は以下の部品番号となります。
・部品名称:SENSOR ASSY CAMSHAFT
オイル漏れの状態
O-ringを交換する前の状態は以下の写真の通りです。漏れたエンジンオイルで黒く汚れています。
今回はクランク角センサーを取り外して各部の清掃とO-ringの交換を行い漏れ部位の特定をします。
使用工具一覧
今回はこれらの工具を使用して作業しました。詳細については作業紹介で解説します。
作業紹介
車両リフトアップ
安全なリフトアップ方法についても徹底解説しておりますので併せてご覧ください。
エンジンオイル排出
オイルパンに設定されているエンジンオイルドレンボルトを二面幅が14mmのメガネレンチを使用して緩めて取り外します。排出されるエンジンオイルはポイパックやトレイ等で溢れないように受けましょう。
エンジンオイル・オイルフィルター交換作業については別記事で徹底解説しています。こちらも併せてご覧ください。
ドレンボルト ガスケット交換
エンジンオイルが滴下されるまで待ち、ドレンボルトの銅ガスケットを新品に交換し再組み付けします。
その際の締め付けトルク値は29.4〜39.2N・mです。トルクレンチを使用して締め付けましょう。
オイルフィルター交換
次にオイルフィルターを新品に交換します。エンジンルーム側からフィルターレンチを使用してオイルフィルターを緩めて取り外します。
なお、SR20DETエンジンのオイルフィルターは養生せずにそのまま取り外すとエンジンマウントやその他の部品にエンジンオイルがダダかぶりしますのでこのようにクリアファイルを加工した養生カバーを差し込んで交換するとエンジン周辺が一切汚れません。
新しいオイルフィルターに交換しましたら締め付けトルク値は14.7〜20.6N・mで締め付けましょう。
アンダーカバー取り外し
クランク角センサーを取り外すにはNo.1シリンダーを圧縮上死点に合わせてから取り外す必要があります。
クランクプーリーを工具を使用して回転させる必要がありますので、アンダーカバーを取り外します。
二面幅が10mmのソケットレンチを使用してアンダーカバー固定ボルトを取り外し、アンダーカバーを車両から取り外します。
No.1シリンダーを圧縮上死点に合わせる
クランクプーリーの中心にある固定ボルトを二面幅が27mmのソケットレンチを使用して時計回りに回転させてNo.1シリンダーを圧縮上死点に合わせていきます。
腕の長さが長い工具を使用すると楽にクランクプーリーが回せます。
位置合わせする前のクランクプーリーの位置はこのようになっていました。
クランクプーリーを工具で回転させながら、切り欠きが黄色に塗られている部位をフロントカバーのタイミングインジケーターに合わせます。
なお、切り欠きは全部で6箇所あり、左から2つ目が0°の位置になります。
真上から見るとこのような位置関係になります。
エンジンオイルフィラープラグを取り外して1番シリンダーのカムがインテーク側になっていれば位置合わせは完了です。もしもエキゾースト側を向いていた場合はさらにもう一回転クランクプーリーを回します。
クランク角センサー取り外し
クランク角センサーを固定している取り付けボルト2本を二面幅が12mmのソケットレンチを使用して緩めて取り外します。
なお、クランク角センサーを固定している上側のボルトはセミディープソケットを、下側を固定しているボルトはディープソケットを使用して取り外しました。
クランク角センサー固定ボルトが外せましたらコネクターを取り外し、まっすぐ手前に引き抜くとギリギリのスペースでエンジンから引き抜くことが出来ます。
取り外したクランク角センサーはこのような状態です。
クランク角センサー O-ring交換
クランク角センサーから古いO-ringを取り外し、新しいO-ringをエンジンオイルを付けてから組み付けます。新しいO-ringに傷が付かないように慎重に作業しましょう。
なお、ギア部分の寸法は26.3mmで
O-ring溝部の寸法は27.5mmです。
クランク角センサー 車両へ組み付け
O-ringの交換が完了しましたらクランク角センサーを車両に組み付けます。
再組み付けの際はローターシャフト側合いマーク(刻点A)をハウジング側合いマーク(刻線)に合わせて真っ直ぐに挿入しましょう。
また、クランク角センサーの取り付け位置は本来ならば点火時期調整後に締め付けが必要ですが、今回はボルトの締め付け圧痕を参考に元々の位置に戻して組み付けました。
クランク角センサーの固定ボルト2本をトルクレンチを使用して、締め付けトルク値12.7〜15.7N・mで締め付け、コネクターを挿入すればクランク角センサーのO-ring交換作業は完了です。
最後に新油を注入してオイルレベルを調整すれば作業は全て終了です。
クランク角センサー清掃後写真
今回はクランク角センサーの元位置がわかるようにある程度、オイル汚れを残した状態で再組み付けしました。
最後に
いかがだったでしょうか。クランク角センサー交換作業自体は非常に簡単ですが、交換前にシリンダーを圧縮上死点に合わせる点や、クランク角センサーを取り付ける際にローターシャフト側合いマーク(刻点A)とハウジング側合いマーク(刻線)を合わせて組み付ける点、組み付け後に位置合わせや点火時期調整が必要な点等、慎重な作業を伴います。一人で悩みながらやる作業としては難易度がやや高めですのでこの記事が交換作業の一助になれば幸いです。
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