自動車整備士が教える錆びたボルト・ナットの緩め方・外し方 徹底解説

整備ノウハウ

はじめに

古い車のエキマニ交換やマフラー交換などの熱の入った部位を整備する際に、予定していた作業時間よりも長く掛かることがあります。その要因の中で一番多いのが『』です。熱が入る部位かつ、雨などの水分や豪雪地帯で道路に撒かれる塩化カルシウムなどの塩分で『』はより進行してしまいます。

教科書には載っていない錆びたボルト・ナットを緩める方法について徹底解説します。是非とも最後までご覧ください。

緩める前の事前準備

緩めたいボルト・ナットのねじ部に『浸透潤滑剤』を吹き付け、ボルトとナットの間に浸透させ摩擦抵抗を低減させます。錆がひどい場合は浸透潤滑剤を塗布してから”一晩”放置します。私がいつも愛用している浸透潤滑剤のおすすめはこちらです。

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自動車業界でこの商品を知らない人はほぼいないと思います。圧倒的な商品力があります。また、ラスペネは逆さにしても吹けますのでボルトのねじ部が奥側にあってもねじ部までアクセスがし易いです。数多くのプロの整備士がラスペネを愛用しています。実際にラスペネを塗布した状態が以下の写真です。

ちなみに容量が少ない”ミニ”も販売されています。

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緩め作業

では実際にCase別に緩め作業について紹介します。

Case① ボルト・ナットの頭が残っている場合

ボルト・ナットの2面幅がそのまま残っている場合は、6角のソケットレンチを使用して緩めます。12角のソケットではボルト・ナットとソケットの接触面積が少ないのでNGです。また、インパクトを使用して緩めることは絶対にNGです。ボルトが折れ、心も折れます。

おすすめのソケットレンチはこちらです。

フランクドライブエクストラ(FDX)は従来品のFlank Drive ®︎Socketの新商品です。従来品と比較して、よりグリップするように接触面を変更し最大25%の強度UPを実現しています。また破損したボルトナットに対して回転力が50%アップしています。お値段は張りますが、数多くのプロの整備士から選ばれるだけのことはあります。

もう一つのおすすめは日本のトップメーカーKTC(京都機械工具)の商品で”nepros”のセミディープソケットです。

私はこちらを長年愛用しています。メッキが美しいだけでなく、ソケットの強度ももちろんお墨付きです。

Case② ボルト・ナットの頭が錆で朽ちて痩せている場合

ボルト・ナットの2面幅が痩せてしまっている場合は通常のソケットでは全く歯が立ちません。そんな時おすすめはツイストソケットです。ツイスト形状の刃が損傷したボルト・ナットに噛み込むことで痩せていても緩めることが可能です。おすすめの商品はこちらです。

こちらもKTC製のTB3TW10 ツイストソケットセット(10コ組)です。

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私は9.5mm(3/8 inch)はこの商品を愛用しています。今までにもこの製品に何度も助けられました。いざと言うときに頼りになる製品です。

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また、12.7mm(1/2 inch)でもKTC製のTB4TW05を愛用しています。大トルクにも対応出来ます。

Case③ ボルト・ナットの頭がほぼ丸いとき

Case②とCase③の優先順位は特にありませんが、この方法も有効です。『バイスプライヤー』と『モンキーレンチ』を使用して緩める方法です。ボルトやナットの2面幅を直接バイスプライヤーでがっつりと掴んで、掴んだままの状態のバイスプライヤーを大きめのモンキーレンチで挟んで回します。モンキーレンチはてこの”うでの長さ”を長くするために使用します。おすすめのバイスプライヤーはこちらです。

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ボルト・ナットを縦向きに掴むならこちらがおすすめです。IRWIN バイスグリッププライヤー 10WR-Cです。VISE GRIPと名乗れる商品はパテント(特許)の関係でこの製品しかありません。

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しっかりと横方向からボルト・ナットの頭が掴めるならこちらがおすすめです。同じくVISE GRIPです。知る人ぞ知る形状の商品で、3点でしっかりと対象物を保持できます。

Case④ ボルト・ナットの頭がない場合

最終手段はこの方法です。頭の折れたボルトのねじ部を取り出すにはナットを”溶接”します。サイズのイメージは2面幅が10mmのボルトには2面幅17mmのナットを溶接します。溶接がし易いように溶接するナットの内径をボール盤で削り広げるとよりやり易いです。車両火災を防ぐために厳重に周りを養生することが溶接作業よりも重要です。きちんと溶接さえできればほぼ確実に緩みます。

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私はアストロプロダクツの溶接機を愛用しています。100Vでも十分パワーがあります。

緩め作業のコツ

Case① ボルト・ナットが少し動いた場合は徐々に緩めるべし

スピンナーハンドル等のハンドツールを使用してガツンと緩めることができた場合は、焦らず少し緩めて少し締める。また少し緩めたら少し締めるを繰り返して徐々に緩めていくことが大切です。ここでも、無理に力任せで緩めていくと簡単にボルトが折れて心も折れます。インパクトなんて論外で出番はありません。

Case② 固着がひどく全く緩まない場合はバーナーで炙るべし

ここは無理をせず次の一手を打ちます。それは”バーナー”でナットを炙り固着を外して緩めます。バーナーで炙るとナットが熱膨張により体積が増え、膨張し、ボルトのねじ部分との固着を外す方向に働きます。おすすめのバーナーはこちらです。こちらも使用前に車両火災のリスクを最大限に防ぐ必要があります。

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Case③ 固着がひどく全く緩まない場合はインダクターで加熱するべし

この製品は値段が高いですが、車両火災リスクも少なく余計なところを加熱する必要がないのでとても優秀な製品です。自動車業界では流行っている工具です。

Case④ 固着がひどく全く緩まない場合は冷やしてみるべし

更なる次の一手は押してダメなら引いてみろのイメージです。焼いてダメなら冷やしてみろということで、LOCTITE(ロックタイト) の錆び取りスプレー ”フリーズ&リリース”を使います。マイナス43℃のショックフリーズ効果により、錆や腐食などで固着したボルトやナットなどを取り外しやすくします。一番のメリットは車両火災リスクが激減することです。最近特によく売れています。

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緩め作業の後にやるべきことはボルト・ナットの”清め作業”

固着したボルト・ナットは出来るだけ再使用せずに新品と交換します。どうしても再使用する場合は”タップやダイス”を使用してねじ部分を整えます。整える際に使用するおすすめの工具はこちらです。

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ライト精機(Right Seiki)
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車いじりをするには一家に1セットあるといざという時にも安心です。私も1セット持っています。タップ・ダイスを使用する際に併せて使用したいおすすめケミカルはWAKO’Sのタッピングコンパウンド TC-Aです。間違っても同じWAKO’S製のラスペネを使ってボルト・ナットを整えることはNGです。タップ・ダイスが滑って切れなくなります

また、タップ・ダイスを使ったボルト・ナットの清め方についてはこちらの記事もご覧ください↓

再組み付け時

最後に部品を組み付ける際のおすすめの一手間を紹介します。この一手間をするだけで3年後の自分が確実に楽できます。それは再組み付けする際のボルト・ナットのねじ部に焼き付き防止剤を塗布しておくことです。たったこれだけのことですが、全く違います。騙されたと思ってお試しください。おすすめはWAKO’Sのスレッドコンパウンドかボスティックのネバーシーズです。

対象物に塗布しやすいスプレータイプの設定もあります。

最後に

錆びたボルト・ナットを緩めるには何よりも焦らずに落ち着いて万全の備えで挑むことが大切です。古い車を整備していくには錆びたボルトとの戦いがつきものです。錆びないための予防整備も大切ですが、時には戦うことも大切です。備えあれば憂いなし。この言葉に尽きます。(私がいつも工具を買うときに自分を正当化するおまじないです)

最後までご覧頂き、ありがとうございました。車いじりの参考になれば幸いです。コメントやお問合せもお待ちしております。コメントは記事の最下段にある【コメントを書き込む】までお願いします。また、YouTubeも公開しています。併せてご覧頂き、”チャンネル登録”、”高評価”もよろしくお願いいたします。YouTubeリンクはこちら



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